親父

父親の尾行なんてしたくなかった。罪悪感、自己嫌悪、好奇心、様々な感情が入り混じる。

メモに書かれたのは知らない土地のお寺。時間は18時52分。

なんて中途半端な時間なんだ。

五分前に到着して辺りを見渡すが誰もいない。

息を殺して時間を待つ。するとどこからとも無くワラワラと人が集まりボソボソと話しながら固まったりウロウロしたり繰り返す。

すると、1人が驚きの声をあげる。

「焼かれてる!襲撃だッ!」

静けさから一気に殺気立った雰囲気に。

奇祭か儀式でも行われていたのだろうか。

聞き慣れない言葉が飛び交う。

もしかすると、本当に怪しい宗教なのかもしれない…。

しかし、親父の姿は無い。

しばらく慌ただしさが続いた後、暗がりから親父がスーツ姿で現れた。

「てめぇ! ふざけやがってッ!」

複数の男が親父に殴り掛かるが、親父は慣れた様子でヒラリと交わす。

「親父ィッ!」

親父の身体に飛びついた。

「ちっ、娘か…退くぞッ!」

集団は散り散りに去って行った。

「あれ、なんなの? 親父! 何してんだよ!」

目を伏せ親父は申し訳なさそうな表情で呟いた。

「お前には関係のないことだ」

まったく状況が理解できない。

「そのメガネ! なんで緑に光ってんのさ!」

「あぁ、これか。スキャナーだよ」

そこで私の記憶は止まっている。

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