第52話 違う、そうじゃない

 朝起きて、ゲージのトビラを開けてもらって外に出る。ぐっと伸びをして、さぁこれから散歩散歩。


「あー……。今日もダメだわ。怠い……。寝る……」


 ってねえちゃん? 寝るの? 今起きたのに? 寝るの? ……あぁあ。ねえちゃん布団に潜っちまった。

 ねえちゃん最近いつもこんな感じ。少し動いたら、寝る。またすこーしだけ動いたら、寝る。なになに? どしたん?

 暇なのでボールを持って布団の部屋に行ってみる。ねえちゃんの部屋は1番日当たりがいいので日向ぼっこにおススメである。


 枕元にボールを転がしてみる。


「シロ……今は投げられないよ……」


 しゃべれるなら大丈夫だ。投げられるぞ。さぁ投げてみろ。な。


「……はっ。もしかして具合悪い私を元気づけようとしてくれてるの?」


 違う、そうじゃない。ボールを投げろ。

 ……ねえちゃん動かないので窓際に陣取ってボールを投げてくれるのを待つ。


 しばし休憩!


 きゅうけい!


 きゅう……け……すやぁ。


「……はっ。シロ。これはもしかして窓際で私を見守ってくれてるのでは……」


 すやぁ。日向ぼっこさいこう……。むにゃむにゃ。


「もーなんだこのカワイイ生き物は!!」


 へそてーん。


 はっ!? なになに何事!?


「シロー見守ってくれてありがとう! もうちょっとで元気になるから待っててね! あーカワイイカワイイカワイイ!!」


 違うオレ見守ってなんかないボールを投げ……! ちょ、ボール……! わしゃわしゃじゃなくて……!


「カワイイカワイイ!!」


 ちが………………!


「カワイイカワイイ!!」


 ちょ………………!








 ………………よくわからんがこのままやり過ごそう。

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