第40話 爪切り


「……よし。できる。私はできる。私はできる……」


おいねぇちゃんどうした俺に背中を向けて。何かやなことあったのか? そんな落ち込んだにおいはしないけど、となりに座っていようかな。


「予防接種してすぐだから、トリミングいけないんだよね。

覚悟を決めるぞ。さあシロ、やるぞ……!」


なんだよー抱っこか。そんなに気合を入れなくてもいつもしてるじゃないか。ん? 何だその道具は。


「少しずつ……、少しずつ……」


ふー、前足のマッサージは結構気持ちいいんだよね。両方やってほしい。


「ここか? いや、もう少し手前……」


なんか、変な道具で爪をさわられている。ねえちゃん? 一体何を……。


あぁ!


ねえちゃんの目がこわい……。


「ここだ! 一気に切れ……ない。えいっ。おりゃあ!」

パチン!


ひっ! 切ってる。爪切ってる。


「……次。ここじゃない。もう少しナナメにして……」


こ、こわ。やるなら一思いにやってくれよ。。そんなジリジリやられると、俺もう……。


「今だ……あぁっ! シロ! 手ェ引いちゃダメだよー」


いやいやいや怖いんだって!!


「もう一回!」


いやだあぁぁぁぁぁ!!



パチン!



「よし! はいジャーキー!」

わーい肉だ肉だ!


「ジャーキーまだあるよー」

えっ!? いつもより多いな! うひょーやったぜー!!


やった♪


やった♪


やった♪




「ふぅ。なんとかごまかせたかなぁ」



はて。


……俺は今、何か大切なことを忘れてしまった気がする。

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