第39話 いとしのクロさん
今日も散歩の時間、川沿いの道を行く。おれは地面のニオイチェックに余念がない。
「あっ! 前から来るあの形は……シロ、いくよ!」
おれまだ途中なんだけど、まぁいいか。行くのね。この人はいつもこうなの。おれのつごうなんておかまいなしだよ。ねえちゃんがあれあれって向こうを指差してる。なんだ?
あーーーあれは! クロさん!!
クロさんはおれの憧れのカワイイだ。とにかくイケメンだ。全身くまなく真っ黒。目も鼻も爪もだぞ! 超カッコいいんだ。毛並みもふわふわ。短いんだけどくるくるっとカールしててボリュームがある。そしてパンとはった胴体! おれよりも一回りくらい大きくて、並ぶと兄弟みたい。おれはシロだから、いつかクロさんのような黒い見た目になりたい。田吾作の漢気にクロさんの見た目……最高じゃないか?
「あらー久しぶりね!」
「こんにちは! クロも元気だね! うわーぴょんぴょん跳ねて、そうかそうか嬉しいのか!」
わークロさん! お久しぶりです! おれですよ! シロです!
『姉さんお久しぶりです! あいさつ! 姉さんにあいさつさしたい!』
クロさん! ちょっとクロさん!?
『わぁー姉さんオレ嬉しいっす! 久しぶりに会えて嬉しいっす!』
「クロー、手のひらそんなになめて、おやつの味でもするのか? そうか嬉しいかー」
クロさんは俺より人間が好きみたい。いつもこう。おれに背を向けてぴょんぴょんしてる。くっそー今日こそは……! 届け! おれの愛!!
こっち向いてこっち向いてこっち向いて!
「ちょっと! シロ君がクロの背中でぴょんぴょんしてるよ! カワイイー!」
「おー? シロ嫉妬か? あー、クロに構われないのが嫌なのか!」
『姉さん姉さん姉さん姉さんー!』
クロさんおれも! おれも!! おれも見てーーーーー!!
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