記憶を辿る

 彼女は夜道を一人で歩いていた。そこでホシに遭遇し、殺された。

「どこ? ここ……」

 私は声を掛けたことを今でも覚えている。

「ようこそ、闇の世界へ」

「!」

 驚き青ざめた表情で私を見る彼女は、ただただ怯えていた。

「……誰?」

「私の名はアーク。ここは闇の心を測る場所だ」

 そう伝えた。そう伝えれば、自分がどうしてここに来たかを一瞬でも忘れることが出来るだろう。そう思ったからだ。

「お前の名は何だ」

「……」

 答えない彼女に私は何も言わずに待った。ようやく彼女が答える。

「ナンシー」

「そうか。ではナンシー、一問目の問いだ」

「?」

 彼女は私の問いに対して、酷く怖がりながら答えた。そして、ナンシーは問いの答えを間違えた。

「ようこそ! 闇の世界へ! ここはお前を歓迎するだろう!」

 そう高らかに喋る私を観て、ナンシーは自分がもう戻れないと悟る。

 涙を浮かべながらナンシーは言った。

「死にたくない」

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