思い出す

 あの日は、忘れることはない。私がホシの誕生日に洒落た店に行こうと誘った時だ。

 その些細な幸せを味わおうとしていた、一瞬の気の揺らぎでの出来事だった。

「何? 何ですか?」

 ホシがそう答えながら、十人ばかりの武装した男達に囲まれ、私と彼女は驚いていた。

 すると、白衣の男が私達の目の前に現れ、私とホシを観てこう言った。

「連れていけ」

 そのまま武装した男達に捕らえられ、抵抗虚しく私とホシは拉致された。

 ここは研究所のようだったが、私は二週間ほど監視付きで窓のない部屋に閉じ込められていた。

 時折、ホシの悲痛の声が聴こえる。何度もドアを叩いた、ここから出せ! ホシを返せ! と。


 再開したホシは変わり果てていた。

「……」

 目が死んでいる。何をされたのかと思い、私はホシに話しかける。

「ホシ、大丈夫だったか? 何かされてないか? 痛い所はないか?」

「……」

 ホシは無言だった。そして、ホシのほうにナイフが投げ渡される。ホシはそれを拾い、私の心臓へとそれを刺した。

「ホ……シ? どう……して」

 私の意識はそのまま無くなる。気が付けば、私は真っ暗な場所にいた。

「どこだ? ここは――」

 疑問に思っていた私に、ホシの叫ぶ声と、あの研究所の科学者達の断末魔が聴こえる。内側に響くようにそれは聴こえた。

「ホシ! ホシ……!」

 懸命に彼女の名を呼ぶが、私の声は聞こえていないようだった。それから、私は自分のすべきことを考えてた。

 ホシの心臓の音が聴こえてくる。ホシは生きている。私はなぜここにいるのかと考えると、ホシの記憶が私の記憶の中に流れ込んでくる。

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