第3話 一緒に…?
拓海はクローゼットを開け、服を探す。
もちろんだが、女物の服なんてあるはずがない。
「こ、これでいいか…。どうせ着ないやつだし…」
拓海は白色で前にどこかの街並みがプリントされた半袖Tシャツと紺色の半ズボンを手に取り、ご飯を食べている優香の元へと戻る。
「優香さん、男物の服しか無かった。許してね」
それを聞き、優香がチャーハンの入った容器を起き拓海を見る。そして申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「ありがとうございます。そうですよね…男物しか無いですもんね…」
「まぁ逆に女物の服があったら怖いと思うけどね」
「もしあったら変態さんですね」
「変態というか…単に危ない人だと思うよ」
「ふふっ、そうですね」
服とズボンを優香に渡し、拓馬は残っていたご飯を食べ始めた。そして一足先にご飯を食べ終わった優香が言う。
「ごちそうさまでした。あー…私先お風呂いい?」
「ん?いいけど、シャワーの湯加減調整難しいぞ」
「え?そうなんですか?」
「なんつーの?お湯と水一緒に出さなきゃいけないやつなんだ。ほら、ビジネスホテルとかにある……って言ってもわからないか」
「は、はい」
「食い終わってから教えるから、ちょい待ってて」
拓海は急いで、ご飯をかきこむ。ところが優香が驚きの一言を放った。
「なら、一緒に入りませんか?」
「ん?一緒に?別にいいけ――…ん!?一緒に!?」
驚いた拍子に、ご飯を少しだけ吹き出してしまった。優香は「え?何か問題でもあるの?」といった表情を浮かべている。
「うん、一緒に。教えてくれるついでになら一緒に入った方がいいんじゃ無いかなって思ったけど…」
「い、いや…。優香さんが嫌じゃなければいいけど……。俺は男、優香さんは女。一緒に入って、怖く無いの?」
「うん?全然怖く無いよ?というよりも、私……」
優香が困った表情を浮かべる。
「貴方の名前…なんて言うんですか?」
「名前…?あー!まだ自己紹介して無いや!えっと…拓海って言います」
「拓海…さん。私、拓海さんの事、信用してるんです。だから…拓海さんも私の事、信用してください…」
拓海の心臓がドクドクと激しく鼓動する。
こんな気持ち、中学の時の初恋以来だ。もしかしたら、俺は優香に恋をしてしまったのかもしれない。いやいや、そんな事ないはずだ。心に何度も問いかけた。
「あ、はい。信用します」
拓海は軽くそう言ってしまった。そして優香が拓海の手をとりお風呂へと連れて行く。
「じゃあ行くよ!」
「ちょ、ちょっと待って!お風呂の場所わかるの!?」
「え、わかんない」
「わ、わかんないのか。じゃあ俺が案内するから」
「うん、ありがと」
優香と拓海はそのまま手を握りながら部屋のお風呂へと向かって行った。
「ここが浴室。着替えする場所…一つしか無いけど…」
「じゃあ私、浴室の外で着替えるから拓海君は中で着替えてね」
「普通逆じゃ…」
「いいの!」
優香が無理やり浴室内に拓海を押し入れた。
ここに来た時、お互い敬語だったのが、気がついたらもうタメ口で話していた。2人の間に隔てられていた壁が無くなったのだった。
そして、拓馬が着替え終わり腰にタオルを巻いて待っていた。そして浴室のドアが開き、タオルを巻いた優香が入って来た。
「な、なんだろうな、この状況…」
「ね…私もなんか緊張して来た…」
「な、なら今から俺着替えて外に――」
「だーめ。教えて。ついでに一緒にシャワー浴びるよ」
「俺に拒否権は…」
「無いよ?」
拓海は「はぁ…」とため息をつく。ここまで言われたら諦めるしかなかった。
ただ、拓海は女性とこうやってお風呂に入るのは生まれてきてから一度も無い。赤ちゃんの時は1〜5歳くらいまでは親と入っていたが、それはお父さんとだった。実質、女性とお風呂に入るのは初めてだった。
そして、2人は一緒にシャワーを浴びるのだった。
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