君の名前、君の記憶

第2話 お話と料理

2人は、横並びなり歩いている。時間も時間ということもあり、酔っ払った人など見られる。それらを交わしながら2人は歩く。ただ、優香がこの光景を初めて見るような様子で周りを見ていた。

「あそこだよ」

と拓海が指をさした。指した指の方に2人は歩く。

拓海の借りているアパートへと着き、優香を案内する。部屋は1階の1番隅の部屋だった。鍵を開け、中に入る。

「ささ、入って」

玄関の電気を付け、優香を部屋の中に入れる。近くの部屋の人に「お持ち帰りしたんじゃ無いか」など、思われてそうだが、そんな事気にしている場合では無かった。

「ごめんね、今部屋片付けるから」

拓海はそういい、散らばっている服などをまとめはじめた。

「あー…別に大丈夫ですよ？部屋汚いのそんな気にしませんし…」

「こっちが気になっちゃうんですよ。適当にその辺座っててください」

優香は近くにあったソファへと座る。

急いで片付けを終えた拓海は冷蔵庫へと向かう。

「お腹空いてますか〜？」

冷蔵庫の中身は見ながら優香に話しかけた。

「あー…大丈――」

ぐぅ〜〜……

「…はい。空いてます…」

「じゃー、10分くらい待ってて。作るから。その間、テレビでも見てていいよ」

「は、はい…」

ソファの前に置いてあるテレビのリモコンに手を伸ばし手に取る。リモコンの右上にある緑色のボタンを押し、テレビを付けた。

しばらくして、部屋にいい匂いが漂う。それが優香の鼻にも届く。

「いい匂い〜…」

その匂いを嗅ぎ、またお腹が鳴ってしまった。

「ほい！お待たせ。特製チャーハンだよ」

お皿に盛られた1人分のチャーハンが優香の所に置かれる。さっきのいい匂いは拓海が作っていたチャーハンの匂いだった。

「いやー、朝行くときごはん炊いたのはいいけど時間なくて食べれないからそのご飯で作ったんだ。熱いうちに食べなね」

「は、はい…。いただきます」

スプーンを手に取り、一口口に運んだ。

拓海が作るチャーハンはラーメン屋などで出てくるチャーハンと同じくらい美味しいらしい。拓海の友人がそう言っていた。

「お、美味しい…こんなの食べたの初めてかも」

「だろ？チャーハンだけは作るの上手いんだよね」

「チャーハンって言うんですね。初めて知りました…」

「まぁ、記憶無くなっちゃってるし仕方ないよ。そうだ、これからどうするの」

「これから…？」

「うん、どうやって優香さんの家を探す…とか」

「家を…探す…」

「記憶を蘇らせるとかもしなきゃだね」

「うん……」

「とりあえず、一旦落ち着くまでここで暮らすといいよ。どっか行きたい所とかあったら言ってね。いつでも仕事休んで行くから」

「は、はい…ありがとうございます」

そう言い、優香は食べるペースを早める。何時間、あそこに倒れていたがわからないがそのせいもありかなりお腹が空いていた。

「食べるの、ゆっくりでいいよ？時間が無くなる訳じゃ無いだし」

自分の分のチャーハンは口に運び、そう言った。うん、我ながら上手い。最高傑作かもしれない。いや、そんな事より優香の事が優先だ。

「あ、そういえば、着る服どうしよっか」

「着る服…私これしか持ってない…」

「貸してあげるよ。っていうかそれしか方法無いんだけどね。ちょっと待っててな」

「はーい」

そう言うと、拓海は立ち上がり、優香が着れそうな服を探しに向かう。優香はと言うと拓海の作ったチャーハンを美味しそうに食べていたのだった。