第5話 『ぼくのお正月』

『ぼくのお正月』


3年3組 佐藤三太郎


ぼくのお正月は最悪でした。


だって、お母さんは元旦からコンビニでアルバイト。

おせち料理どころか、朝ごはんさえありません。


しかたないので、おおみそかに食べた、年こしそうめんでもチンして食べよう。

でも、ぐずぐずに煮こまれたそうめんは、にゅうめんじゃないの? 

なんてツッコミを入れようと思いましたがやめました。


もちろんお年玉もありません。

だって、お母さんがバイトに行く前に聞いてみたら、目の前でボールをポトンと落とされ、『これがホントの落とし玉だよ』 とニヤリと笑ってドアをしめて行きました。ぼくは、ひざをポンとたたいて、『なるへそ』と思いました。


そんなこんなで、することもなくテレビをボーッと見ていると、くだらないバラエティ番組ばかりで、つまらないひなだん芸人のさむいギャグをえんえんと聞かされてへきえきしていました。


かといって、今年の日本のけいきをよそうするとかで、うさんくさい学者たちが、できもしないデフレだっきゃくとか、社会ほしょうひのぞうだいうんぬんとかぬかしていてまたへきえきしました。


お正月はどこへも行けない。お母さんはアルバイト。

じゃあ、お父さんはどこにいるかというと、けいむしょという所で仕事をしているそうです。そこがどんなところかわからないけれど、いつか帰ってくるよと言っていました。


さて、家にいてもヒマなので、しかたなく友達のマー君の家に行ってみました。

でも、マー君のおじいちゃんが出てきて、外国にりょこうに行っているそうです。

『あーそうですか、別にうらやましくもないですけど、ひこうき事故には気をつけてください』、と言っておきました。おじいいちゃんはものすごいシワくちゃの顔をしていました。


いくあてもなくブラブラしていると、お母さんのアルバイトさきのコンビニがあったので入ろうとすると、若い男といっしょの車にのってどこかへ行ってしまいました。まだ帰る時間じゃないのにどこに行ったんだろう?


帰り道、空をみあげて生きる意味をかんがえていると、川のていぼうのはしの下にホームレスのおじさんが元気なくすわっていました。死んだ魚のような目をしていました。


ぼくは世の中にはもっと不幸な人もいるんだなと思うと、なんだか元気がでてきました。自分より不幸な人がいるおかげで自分の幸せを感じました。


明日はもっと不幸な人をみつけて自分が幸せになろうと思いました。    おわり

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ぼくのどくしょかんそうぶん しょもぺ @yamadagairu

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