僕らの慰安旅行
8月上旬。今年のコンピ研では慰安旅行をすることにした。といっても旅行先は近場だが、個人で行くのとはまた違った楽しみもあるだろう、うん。
1日目の朝、僕達は地元の駅前に集合することになった。人混みを掻き分け、日差しが容赦なく照りつける中を進み、僕は集合場所に到着する。他の部員を探そうと、僕は辺りをきょろきょろと見回した。どうやら、僕が一番のようだな。それから少しして、御門、守家、佐東、児林の順に全員が集合した。僕達は電車を乗り継ぎ、やがて目的の駅へと到着した。
「いやー、着いたー」と佐東は両腕を上げ背を反らし、「楽しみですね」と御門が僕の方を向いて言う。
「どうだ、ここらで何か食べていこうじゃないか」と僕が提案した。そんなわけで僕達は近くのそば屋に入った。
しばらくしてそば屋から出た僕らは、ホテルへ向かう。客室に着き、荷物を皆が置き終わったのを見計らい、僕は文化祭後の、SOS団との勝負に向けた会議を始める。会議(といっても大半が僕の独断だったが)の結果、前線に立って戦う担当を守家と佐東、後方で戦う担当を御門と児林になった。僕はボスとして最後方に構えることにした。それと会議の中では、それぞれの艦隊名を話し合った。僕が「ディエス・イラエ」、守家が「イクイノックス」、佐東が「ルペルカリア」、御門が「ブラインドネス」、児林が「ムスペルヘイム」佐東はユニット名も思い付いたようで、佐東によると守家と佐東が「Liebe(リーベ)」、御門と児林が「gomads(ゴーマッズ)」、全員のユニット名が「NeedLIGHTs(ニードライツ)」らしい。何だかアイドル好きな佐東らしくて、そういうのもいいな。
夕食を食べた後、ホテルに戻った僕達は皆で大浴場に行くこととなった。のだが……正直、僕としては仲間の裸を見ることになるから、少し不安があった。まあ、いいか。まじまじと裸を見ないようにしよう。僕達は着ていた衣服を脱ぎ終え、僕は大浴場への扉を開けた。右側には広々とした浴槽があり、左側には洗い場がある。僕達は洗い場に向かった。僕は適当に浴槽なら一番近い端を選び、風呂椅子に座ると、シャワーを浴び始めた。そうして全身を洗い終わり、浴槽に入った。「はぁ~……」と僕は思わず声が出てしまう。ふと守家を見ると、気の抜けた表情でぼんやりと天井を見上げている。そんな守家を見て、僕は何だか安心した。
そろそろ寝る頃合いになり、全員で布団を出すことにした。児林は一番先に布団に入った。僕含め他の皆は携帯を弄ったり携帯ゲームをしたり、時たま話をしたりしている。そうして一人、また一人と布団に入り、消灯となった。
僕は、何故かその日途中で目が覚めた。ふと辺りを見ると、何やら布団の一つが妙に膨らんでいるのが見える。確か……御門の布団だったな。まさかと思い、目を凝らす。……佐東!思わず僕は息を呑んだ。僕はあえて二人に警戒させようと、そっとトイレに行った。しばらくトイレの中で、二人が正気に戻るのを待つ。タイミングを見計らって僕はトイレから出た。どうやら二人とも自分の布団に戻ったようで、僕は安堵する。だが微かにあの独特の臭いを感じ、気が滅入ってしまった。まったくいい加減にしてくれ……と思いながら、僕は自分の布団に戻った。
翌朝。朝食を食べ終わったあと、僕は佐東を呼び寄せ、あの時の話をした。
「なあ、佐東」
「なに?」
「さ、昨晩の話なんだが。君はあんなことをして良かったと思っているのか?」
「ああ……やっぱりバレてるか」
と、ばつの悪そうな顔を佐東はする。
「で、でも」「御門は満足そうな顔をしてたんだよ」
佐東は何だか泣きそうな顔をして僕を見ながらそう言ったから、僕はしばらく何も言えなかった。
「そ、そうかい。あまり御門に勝手なことはするなよ」と伝えるしかできなかった。
そんなこんなで、僕達は目的のテーマパークへ向かった。そこのテーマパークは、時代劇の撮影にも使われていることで有名だ。江戸の町並みを再現しているのが特徴だという。パーク内を回ったのち、僕達の視界にお化け屋敷が入る。「ね、ね、入ろうよ」と佐東があまりに言うので、僕達はお化け屋敷に入ることにした。最初は5人で入ったが、途中から守家と児林の姿が見えなくなっていた。僕達が先に出てからしばらくして、守家と児林が出てくる。
「なんだ?妙にぐったりしているな」
「ははは……」
やがて僕達はテーマパークのあと買い物をし、ホテルに戻り、翌日のチェックアウトの為の準備をすることにした。
旅行3日目。チェックアウトを済ませた僕達は、早速寺社仏閣に行くことにした。
最初の寺の階段で僕は転びかけたのだが、側にいた守家がとっさに抱き抱えてくれたお陰で転ばずにすんだ。しかし、その瞬間僕は妙にドキドキしてしまった。それから何事もなく寺社仏閣巡りは進み、最寄り駅まで戻り解散となった。
いやぁ、色んなことがあったが、旅行は本当に楽しかった。僕はあの旅行をずっと忘れないだろう。
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