アウェイクサイン

 あの日、僕は夢を見た。

 広大な砂漠。見渡す限りは青い空。その中で、僕は空中に浮遊する感覚を感じていた。しかし、"あの概念"の中にどうやら自分が囚われているということが分かった。カマドウマ。俗称の一つはオカマコオロギ。昆虫好きの僕にとっては、嫌味なものだ。


 話を少し前に戻そう。学校から帰った後、自宅で僕は連日のようにSOS団の公式サイトを見ようとしていた。当時の建前では敵軍視察、といえるだろうか。いざブックマークからサイトに飛ぶと、見慣れないイラストが表示された。なんだこれは?SOS団のロゴか?そう思っていると、突然パソコン画面が徐々に光を帯びた。光がどんどん強くなり、僕は目を閉じようとしたが、閉じることができなかった。

 そして、いつの間にか意識を失った僕は、気が付くと広大な砂漠の中にいた。カマドウマの中に包まれたような感覚を帯びて。「はぁ……」と僕は、つい溜め息をつく。どうすればここから脱出できるんだ?見渡す限り何もないな。しばらくすると、誰かがカマドウマである僕の目の前に現れた。守家だ。

「守家!」

と僕は、カマドウマの周囲を歩く守家に呼び掛けた。しかし、守家は気付かないようだ。そうして諦めた僕は、守家をしばらく眺めることにした。守家はストンと僕の右前方に座り込むと、座禅を組んだ。そのままじっと瞑想をしている。僕がしばらく彼の行動を不思議に思っていると、突然、僕の目がくらみ、周囲の砂が巻き上げられる。どんどん視界が歪んでいき、これ以上目を開けていられなくなった僕は、やっとの思いで目を閉じた。


 次に僕が目を開けたとき、周囲は暗かった。視界の左前方を見ると、見慣れた形の天井灯が微かに見える。ここは……僕の部屋、だ。制服でベッドに横たわっていた僕は上体を起こす。部屋の明かりをつけ、これまでの状況を思い返す。それは僕の知る言葉では夢としか定義できないが、しかし一方で、夢ではないような感覚をなぜだか感じていた。ふとお腹の音が耳に入り、自分が空腹だということを知る。夢とはいえ、散々な目に遭ったな。さて、今日の晩御飯は何にしようかね。

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