風邪と看病
ゴールデンウィークが明けてからすぐのことだ。
「ごほっ、ごほっ……うぅ……」
僕は風邪を引いてしまった。しかもどんどん調子は酷くなるし一人暮らしだし、これは厄介なことになってしまったな。僕は、しばらく部活を休むという用件をメーリングリストで回しておいた。あぁそうそう、コンピ研では連絡のために、メーリングリストを利用しているんだ。メーリングリストがなんなのかはここでは割愛する。各自気になった場合は、目の前の箱で調べてほしい。そうしたところ、なんと部員達が看病に来てくれることになった。風邪を感染させてしまわないか心配だが、まあマスクは全員付けるようだからいいか……。いいのか?いいやもう。
──といういきさつだった。しかしはてさて、これはどうしたものか。
「部長、出来ましたよ!」
今まで僕の自宅で児林が料理を作っていた。ちなみに今日は佐東もいる。児林が僕に、料理が完成したことを伝える。お、出来上がったのか、どれどれ。僕は料理を一口食べてみた。
「お粥をアレンジしてみたんです!どうですか?」
「ふむ。味付けや具はシンプルだが、かつおの出汁が丁度よく効いててうまいぞ」
「本当ですか!?ありがとうございます!部長においしいって言ってもらえてよかったです!」
しばらくして料理を食べ終わり、僕が食器を片付けようとすると、「あぁ部長、部長は休んでてください!僕たちが洗いますから!」と児林が止めに入った。
「ありがたいが、本当にいいのかい?」
「いいんですよ、部長」
「おい佐東、佐東も片付けやるんだぞ、手伝ってよ」と児林が突っ込むと、「あぁうん、分かった、はいはい」と佐東が渋々といった感じで作業に取り掛かる。そういえばほんの少し前、佐東が本棚を凝視していたのを見たが、何だったのだろう?尤も、高熱でぼーっとした頭ではまともに考えられず、彼らが帰ったあとはすぐ熟睡してしまった。
翌日、守家と御門が来てくれた。二人は手分けして、ビニール袋から栄養ドリンクやレンジ調理で食べられるスープやご飯パックなどを取り出す。その後は掃除もしてくれた。本当にありがたいものだ。それからも何日か部員達が見舞いに訪れてくれた。特に守家と児林が来た日はどことなくピリピリとした雰囲気を感じたが、気のせいか?
その日は最後の看病の日となった。これまで二、三人が主だったが、他の部員達の都合で守家だけとなっていた。
「その……お、俺が料理作っても、いい、かな」
「?……いいけど」
食料やその他諸々を袋から出した後、守家はそう僕に問いかけた。守家の料理を待つ間、トン……トン、トンと、時折間が空くような不規則な包丁の音が聞こえる。あまり料理に慣れていないようで、僕は何だかほほえましく感じながら耳をそばだてる。パソコンを点け、ネットサーフィンをしながら料理が出来上がるのを待った。
「出来たよ」
料理が完成したことを僕に伝える守家は、安堵した表情を浮かべている。スープの中に野菜とキノコ、鶏肉が入っている。僕は試しに料理に手をつけた。僕が予め作っておいた冷凍ご飯をレンジから取り出しながら、守家は料理の感想を聞く。コンソメの味は薄いが、具材は十分煮込まれていて、上出来だ。そう感想を告げると、「そうか。味、薄かったか。でも、ちゃんと火が通ってるなら良かった……かな」と、守家はほっとしたような表情を見せる。
さて、調子も良くなってきたし、そろそろまた登校するか。満足げな守家を見つつ、僕も満たされた気分で料理を食べ進めた。
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