守家、君はいったい
数日後。何とかプロジェクトの概要が決まった。しかしこう、なにか捉えようのない不安が僕の中にはあった。いつも日曜日に行くミサも、当日は前述のモヤモヤとした感情を抱えながら臨むこととなる。ミサが終わった帰り、どことなくすっきりした気分で歩いていた僕は、後ろから近寄ってきた佐東に気付く。
「ぶーちょおっ」
「ん?って佐東か。君もミサに来ていたのか?」
「まあね。俺にもちょっと事情があって」としばらく他愛のない話をし、少々間が空くと、佐東がふと口を開いた。
「そういやさ、守家の」
「守家?」と僕は聞き返す。
「ああ。あいつの、中学時代の噂知ってる?」
「なんだよ、もったいぶってないで早く」
「暴力事件」
「えっ」
「て言っても、なんか過剰防衛だったらしいけど?しばらく停学したんだって」
詳細を聞いた後、佐東と別れた僕は、しばらく守家の過去について頭がいっぱいだった。今の彼からは考えられなかった。我に返ったとき、彼は一体何を思ったのだろう。まあ、そんなこと面と向かって聞く度胸は、僕にはないのだが。
自宅に帰った後、僕はあることを思い付いた。ほんのささやかなことだが、行動に移した理由を端的に言ってしまえば、彼の笑顔が見てみたかったから……なのかな。今このことを思い返すと、よりそう感じるよ。
翌日の放課後、僕はいつものようにコンピ研部室へと赴く。部室には守家が先客のようで、妙にせかせかとした様子でパソコンを操作した後、僕の方を向いて挨拶した。もしやこいつ、この神聖なる部室で何か人に見せられないものでも開いてたのか?と一瞬思ったが、まあいい。その時はそんなことどうでも良かった。
「どうだね。あのプロジェクトの作業、捗ってるかい?」
「は、はい。それなりに」
「ところで、なんだ」僕はパソコンを起動しながら、話を進める。
「?」
「君に見せたいものがあるんだ。犬の動画なんだが、これが面白いんだよ」と説明しながら、守家に画面を見せた。
「――ふふっ」
彼は微かに笑みを見せた。瞬間、僕は全身がむずむずとした感覚になり、一気に体温が上がった。な、何だろうなこれは。ともあれミッション成功だ。しかし全く、自分でも何をやってるんだろうな。守家に動画を見せた理由を聞かれ、戸惑いながら返答を考えつつ、ひしひしとそう感じた。
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