前途多難、かもしれない
「ねえ部長、あ、朝比奈ちゃ……じゃない、朝比奈さんの胸の感触、どうでした?」
作業がほとんど終わり、茫然自失とした状態で部室の自分の席へと戻った僕に、佐東が食い気味に聞いてくる。
「はあっ!?なんでいきなりそんなこと――」と言いかけた僕の視界に、険しい目つきでこちらを睨む守家が入ってきた。な、なんだよ守家、そんな恐ろしい顔で僕を見るなよ!僕は被害者だぞ!そんな風に思いつつも、マシュマロのような感触だった、と恐る恐る佐東に伝えると、彼は手に持ったメモに何やら書き記していく。なあ、それをメモして一体なんになるというんだい?と。そんなことを考えていると、御門が僕のもとに駆け寄ってきた。「部長、先ほどは大丈夫でしたか?」「部長、あの、あまり気を落とさないでくださいねっ」と児林も後に続く。そんなこんなで一段落ついたところで、僕は構想中のプロジェクトと、目論見を皆に話した。
「部長、それ本気で言ってるんですか?もう少し穏便な方法で解決しません?」と佐東は半ば呆れたような顔を見せた。
「じゃ、じゃあどんな方法があるんだ。言ってみたまえ」と僕は問いかけると、「えぇ?うーん……」と佐東はしばらく考え込み、
「定期的にSOS団と会合を開くとか?」
「単にキミが団員と仲良くしたいだけじゃないかそれ!却下だ却下!」僕は一旦場を仕切り直し、「まぁ佐東はさておき、オリジナルゲームの制作会議を始めるとしようか」と、改めて部員たちと会議を進めた。
「諸君、まずはこれを見てほしい」
僕は一枚のSDメモリーカードを見せ、
「部室の整理をしたら出てきたものでね」「『The day of Sagittarius 2』。どうやら、3年前のコンピ研が発表したものらしい。宇宙を舞台とした対戦ゲームだ」
「2っていうことは、初代もあるんですか?」と、児林が僕に訊ねた。
「それらしきCD-Rを見つけたんだが、データが破損してしまっていてね。プレイできるのはこれだけだな」
「あぁ、そうなんですね。じゃあみんな、
試しにプレイしてみよっか!」
というわけで、早速僕らは準備を始めた。
「ぶ、部長。これは一体?」「ええっ、な、なにが起こったんだ?ちょっと見せてくれ」
守家のパソコンを見てみると、ゲームの画面表示が明らかにおかしくなっているのが分かった。どうやら皆のゲーム画面も変なふうになっているようで、試しに守家のパソコンで操作してみたが、そのうちゲームが強制終了してしまった。もう一度全員分再起動してなんとかプレイできたが、やや挙動に難があるようだ。そこら辺も改良の余地がありそうだな。
「皆、ひととおり前作のプレイは終わったな」「それではまず、プログラミング言語から決めようか。僕としてはC++が適していると思うんだが、どう思う?」と僕が部員たちに問いかけると、佐東が「ええ……C++って結構難易度高いじゃないですか?それならCでも良くないですか?」
と、いかにも困惑した様子を見せた。
「僕はそう思わないな。より発展している言語の方が、表現の幅も広がるものだろう」
「そうですよ佐東先輩。後発の方が、様々な改良が加えられてるんじゃないでしょうか。といっても、僕はプログラミング経験ないですけどね」
「ないのかよ!」と佐東がわざとらしく肩を落とした。僕が半ば呆れつつその光景を眺めていると、守家がおずおずと手を挙げるのが見えた。「あ、あの」「何だね?」「そ、その、Javaとかはどうなんでしょう」「な?い、いや……。僕としてはC系統が適切じゃないかと考えたんだが、どうだい」自分はそこまでプログラミングは詳しくないからと、守家はあっさり引き下がってしまった。なんというか、これには色々な意味で驚いた。
「うーん……それじゃあ、」と佐東は多数決を提案した。結果、多数決によりC++に決まった。プログラミングが苦手な部員には荷が重いだろうが、頑張ってくれたまえ。僕も出来る限り手を貸すからな。
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