エピローグ
愛弓です。
クリスマスが過ぎて、今はもうお正月。
元旦には家族みんなで初詣に行ったの。わたしは武居を誘って、パパが部長を引っ張って来たから、総勢六人。
部長は黒い袴姿で、一瞬誰かと思っちゃった。
「似合わないか?」と言って、腕を広げて見せる部長。
「いえ、案外似合ってて驚いてます。ねっ、愛矢」
愛矢はぼうっと部長を見ているだけで何も言わなかった。うーん、愛矢が部長に恋してるなんて、まだ信じられないな。
「そうそう、和菓子ちゃんから年賀状が届いたの。色々ありがとう、だって。一応、報告しとくね。部長も色々してくれたみたいだし」
「色々? おれは何もしてないけどな」
とぼけちゃって。
「小野尾くんとも話し合って、ちゃんと仲直りしたそうよ。彼とはとってもうまく行っているみたい」
それはそうと……。
わたしは隣を歩く武居の横顔を、そっと盗み見た。――わたしの方はどうなんだろう……? 少しは進展してるのかな?
「何?」
武居が不思議そうに見返して来る。
「ううん、何でもない」
わたしはあわてて武居から目をそらし、後ろの愛矢と部長を振り返った。
「ねえ、あとでケーキ買わない?」
「クリスマスに食べたばかりじゃないか」
部長が呆れたように言う。
「じゃあ部長は和菓子にしたら? 愛矢も和菓子派だよね。わたしは武居と小野尾くんの店に行くから、愛矢は部長と和菓子ちゃんの店に行きなさいよ」
愛矢は表情を変えなかったけど、ほんの少し頬を赤くして部長を見上げた。
「そうだなあ……。行くか、愛矢?」
部長はのんびりと言った。愛矢の様子にはまったく気付いていない。わたし以上に鈍いのね。花のことにしか興味がない人だし、愛矢の恋は前途多難みたい。頑張れ、愛矢。
わたしは愛矢を励ますように、握りこぶしを作って高く上げた。
「よし、じゃあ決まりね。帰りはケーキと和菓子よ!」
わたしの声は風に乗り、晴れ渡った冬の空へと上って行った。
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