プロジェクト◯ ダイエットへの挑戦←そろそろ消されるかもしれない
当直明けで昼過ぎくらいに帰宅です。
すると台所には網目状の生地で、その合間にはブルーベリーか何かのジャムが敷き詰められた、パイ的な物が置いてありました。
疲れた体に甘いものはいいですね。本当は甘いものを食べたからといって即効性はないそうですが、それでも気分の問題です。
ははーん。さては製菓学校に通う妹が、授業で作ってきたものですね。
コミュ障ではない(強調)私は、念のため食べてもいいか相談しました。
私「台所にあったブルーベリー的なジャムの乗ったパイ的な物は食べていいの?」
そうたずねると、母親は毅然と言い放ちました。
母「チェリーの奴ね」
私「ブルーベリーじゃなかった!」
母「あれビスケット生地だよ」
私「パイでもなかった! 俺の発言何一つあってないやん!」
母「しかもあれ、
まずいよ」
私「食べる気すら無くすわ!」
間違っていた発言を全否定した挙句、作品すらもディスっていった母親はさすがだと思います。
それでも、食べてみました。
うん。
ちょっとこう、ビスケット生地が強すぎでした。
がんばれ妹よ。
友達がほぼいなくてもがんばれ←コミュ障あるある。友達がいない。
関係あるようなないような前置きからスタートですが、本日もお願いがあります。
私がBGMスタートと書きましたら、とある曲をBGMとしておかけください。
そうすれば、今日のエッセイはとても壮大なものになるはずです←曲の効果頼み。
それは数年前のこと。
病院という職場柄もあり、健康診断は年に2回行われます。
採血、検尿、レントゲン、聴力検査などオーソドックスなものです。
大人になると、健康に関する話題も、話のネタになるものです。
私たちの部署の中でも、一番年上の先輩と話しをしていました。
その先輩は40代となり、酒を飲むことが大好きです。柔和な表情と、でっぷりとボリュームのあるお腹を揺らしていました。
先輩「おう遠藤。採血の結果どうだった?」
私「こんな感じです。トリグリ(中性脂肪)がハイになっちゃいまして」
特に隠す必要もなかったので、先輩に見せました。
食生活はあまり良いとは言えず、疲れやストレスから家に帰るまでにミスドやマックに立ち寄る生活をしていたため、数値が悪くなるのは当然でした。
体重は人生史上最大の93キロを突破。トリグリの数値は400オーバーでした(正常範囲は180です)。
それでも、私は内心大丈夫だと思っていました。
そりゃ出来ることなら痩せたいですけど、まだ若いということでやろうと思えば出来るなんて、驕りに溺れていたのです。
そんな油断にまみれた私に、先輩は言い放ちました。
先輩「遠藤……お前トリグリやばいな。俺より数値が高いぞ」←実質の死刑宣告
高いぞ、高いぞ、高いぞ……
先輩の言葉がエコーのように繰り返されました。もしこれがアニメであったなら、ムンクの叫びのように顔を歪めて、奈落に落ちていくような描写がなされたでしょう。
ずんぐりむっくりで、寝るときに呼吸器をつけなければ、寝ている間に喉がつまり、命の危険がある先輩よりも、数値が悪いというのです。
私の驕りは、見事に打ち砕かれ、そして決心致しました。
これはやばい
ダイエットしなくちゃ!
bgm、スタート(ぼそっ)
デデッデデッデデッ
カゼノナカノスーバルー←あうと
二十代半ばにして、ダイエットに挑む一人の男がいた。
その名も、遠藤孝祐(仮名)。
かつては昭和のシャンゼリゼ通りと冠された、稀代の音楽家だった(大嘘)
今までの人生で挑んだことのない、かつてない挑戦の幕開けだった。
一日に食べたものをひたすら記録する。それは飲み物であれど例外ではない。そして出来る限りのカロリーを調べる。
同時に体重も毎日測り続ける。重要なことは今の段階では決してダイエットを始めないことだ。
なぜなら今の自分の生活についてデータとして見直すことが第一の目標なのだから。現状の把握と自分に対する正しい認識を得なければならないのだ。
レコーディングダイエット。
根性論や食事を無闇に減らすダイエットに頼るわけではなく、ひたすらデータと向き合う考えるダイエットなのだ。根性や気力といったある種の人間的な強さを期待できない以上は理屈で行えるダイエットがいいと踏んだのだった。
不思議なことにただデータをとっていらとまず3週間ほどで3キロほど痩せた。
食べたら記録するというルールを意識づけたことで知らずに食べる量が抑えられたのだろう。書き続けることを面倒に思う気持ちは思わぬ効果を生んだ。
そして自分が何時に何を食べて飲んでいるのかあらかた把握した一ヶ月後にダイエットは本格的に開始された。
この頃になると何の食べ物が大体どれくらいのカロリーかを把握できるようになる。食品を買うときはまず裏を見てカロリーを確認する習慣がつくのだ。
次の段階。
それは。
一日のカロリーを2000キロカロリー以内に抑えることだった(チジョーニアルホシヲ)
それは決して容易ではなく食べられない食品や外食を思って涙することもあった(ダレモオボエーテイナーイ)
それでもやるしかなかった。
健康な肉体のため。
そして
痩せてモテモテになるために!(ヒトハソラバカリミーテルー)
ツーバメーヨー!
ストップ!
そろそろアウトです←とっくにアウトだよ。
えー、話を戻します。
それからの日々は順調でした。
体重はみるみるうちに下がり、2ヶ月ほど経過した後には、体重は85キロまで落ちました。日々落ちていく体重を眺めるたびに笑みがこぼれました。
しかし、何事も順風満帆とはいかないものなのです。
数々のダイエッターが苦しみに囚われ、ダイエットの魔物に足元を掬われる恐怖の事象。
停滞期です。
その時期に陥ると、体重が減らないばかりか、むしろ微増することも多々あります。
人には恒常性があります。ホメオスタシスと呼ばれていますね。体温を一定に保つ機能なのですが、それは体の状態を今まで安定していた状態に戻そうとする効果もあるようです。
今のカロリーが減った生活に体が適応し、これ以上体重が落ちづらい体になってきたこと、あとはもともと太っていた状態を正常とみて、元に戻そうという体の作用などに襲われ、数々のダイエッターはこの時期に脱落したりします。
がんばっているはずなのに、今までのやり方では体重が落ちない。
そのことに絶望して、ついつい食事の制限を無視してしまい、あとはなし崩しです。
そのような悪夢がふとよぎります。
けれども、人は物事を知ることで対策を練られるのです。
停滞期に陥ったことで、私は思わずニヤリと笑いました。
そうなるとダイエットも、次の段階です。
停滞期の抜け出し方。
それは新たな刺激を与えることです。
ここで、今まであえて行わなかった運動を絡めます。
記録し、飲み食いしたもののデータを客観的に眺めつつ、カロリーを管理すると絶対に痩せるのですが、体重が減ったことによる落とし穴もあります。
それは、筋力の低下です。
もちろん脂肪も落ちるのですが、エネルギーを消費してくれるのは、間違いなく筋肉です。筋肉が維持されていると、入ってくるエネルギーは少ないのに、消費だけが多くなります。
脂肪と同時に筋肉も減るのです。なので消費カロリーも減ります。世のダイエッターがリバウンドをするのは、以前と同じ食生活に戻すと、カロリー消費する筋肉も減っているので以前よりもむしろ太りやすい体になっているのです。
なので停滞期こそ、ハードすぎない軽い筋トレをするべきです。
筋力を鍛える意味合いというよりも、維持するためと、今までしてこなかった刺激を体に与えるためです。
その目論見は成功しました。
ゆっくりとしたペースでありながらも、体重は徐々に減少し、ついには72キロまで体重が落ちたところで、ダイエットとしての行動は一旦幕が降りました。
1年半もの時間をかけて、約20キロの減量です。ペースを早くしすぎないダイエットは体への負担も少なくて健康的です。やはり急激に痩せるとびっくりするほど体力もなくなるのです。
体重って実は脳にも影響しているのかもしれないと思います。
思考はクリアとなり、気力も充実します。エレベーターを使わずに階段を使うことも、進んで行うようになります。
脳の動きにもキレがあります。太っていた頃よりも自信が漲り、余分な考えは研ぎ澄まされてなくなる感覚でした。
私は、生まれ変わったかのように意気揚々としていました。
そんな中、とある看護さんに話しかけられました。
看「遠藤くん。大丈夫?」
私「別に大丈夫ですけど?」
なんのことかわからず、首を傾げました。
ただ、私は呑気でした。
いよいよモテ期かと鼻息を吹き出しました。フンス。
看「なら良かったけど。遠藤くん噂になってる。先生が言ってたよ
アイツ……ガンで死ぬんじゃないかって」
……
わしゃ知らんところでガン患者扱いされとったんかい!
痩せすぎた弊害で、知らないところで噂の的となっていたみたいです。
遠藤、ガンで死ぬんだってよ。
ただのダイエットだと説明して回りました。
それから数年経ちました。当時のことを懐かしく思いつつ、あたりめをかじりながらビールを飲みます。
楽しげな気分でいる中、ダイエット後に買ったズボンに着替えました。
ブチッ。
ん?
何故かボタンが飛びました。
体重計にドーン。
8 0 キ ロ
……
プロジェクトED、今再び始動です(遠藤ダイエットの略です)。
カゼノナカノスーバルー。
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