山ヲススメ

 全然更新ができてなくて、とても申し訳なく思います。


 修羅場が今週末までには終わるはずなので、出来るだけペースを守って更新していきたいものです。




 さて、皆様は、山へ行ったりすることはありますか?


 私の中で印象的な山の思いで言えば、小学校中学生の時に行われた、自然教室という行事の時に振り返ります。


 当時の私は、どこに出しても恥ずかしくない肥満児でした。

「ポテチ食べる? 一人一袋な!」と当時はマジトーンで言い放ってました。


 辛いものの後は甘いものが欲しくなるよな、とポテチとアーモンドチョコを無限ループさせて、自分の体を苛め抜くという修行を繰り返しました。


 質量が大きいということは、ちょっと運動するだけでエネルギー消費も激しいです。まぎれもない、自らの体を肥えさせることで、他の方より自らに苦難を課していたのです。


 ええ、そういうことにしておいてくれないでしょうか(小声)。


 修行は日常生活から行うことが大切なのです。


 だからわざわざマラソン大会なんてデブを辱め、屈辱を刻ませつつ、気力を削いで鬱状態を誘発させようとまで思えるあの悪魔のごとき行事をやる必要なんて、ないのです。誰だ考えたやつ。肉厚で押しつぶしてくれようか。





 すいません取り乱しました。


 話が逸れましたが、自然教室という行事があり、山の中に建てられた小屋で一泊し、雄大な自然に触れる情操教育の一環たる行事です。


 川に入り、その身に冷たさや自然の流れを感じ、その場で取れた材料を調理し、命の連鎖を感じる。当たり前に提供される食材も、苦労の末にこうして口に入れることができる。

 その命は、奪ったからこそ糧にできるのだと。

 そんな世界の流れに感謝しながら、みんな涙を流しながら虹鱒を頬張ります。


 うん嘘です。中学生がそんなこと考えるかい。


「生きた魚なんて捌けなーい」というぶりっ子した声に、しょうがないなと先生はここぞとばかりにいいところを見せます。それが可愛い生徒であれば、気合いはきっと五割り増しくらい。


 そんなとても人間的な営みを行い、いよいよメインイベントの一つ。


 山登りです。


 海も山も比較的近い田舎なのですが、私は山に登るのは初めてでした。


 中学生が登るのですから、そこまできつい傾斜でも、長いコースでもないです。おそらく、ゆったりとした歩みでも、四十分ほどの山道です。


 雨が降った後で、ぬかるんでいた為、時折足を取られて転びそうになりますが、なんとか踏ん張ります。


 私は、はじめての山にはしゃいでいました。

 登るたびにどんどん足の力が奪われていくようにも感じますが、どんどんと高くなる視界に、興奮に声を荒げていました。


「みんなー早く行こうよー」


 隊列も守らず、高揚に任せていた私に、先生は苦笑していたと思います。

 けどそんなことは気にもしませんでした。

 はじめての山登りは、とても楽しかったのですから。





 まあそんないい話で終わるわけがないんですけどね(予定調和)。


 あの前置きの意味が今、生きる。


 さて、デブがはしゃいで、自分のペースを考えずに山に登ると、どうなりますか?


 正解は……




「はあっつあっぁ、みんな、ま、まって〜(涙と鼻水)」


 まあこうなりますよね。


 体力の限界が、早々に訪れます。


 一気に先頭から最後尾へ。


 一度切れた体力は、休憩を持ってしか回復できないです。


「ご、ごめんごほっ、みんなっ、さき、いってうえっほーん」←見てられない。


 一応口だけでも心配の言葉を口にして、クラスメイトたちは私の視界から消えていきます。


「ゆっくりでいいから、休んだらきちんとくるんだぞ」


 そう優しく声をかけてくれて、視界の端へと消えていくのは先生。


 ありがとう先生。


 って先生!?


 ワイ山に一人で置いてけぼりやんけ!


 いくら一本道とはいえ、教師にすら見捨てられるとは、今思えばとんでもない気がします。


 寛容な部分もある時代でしたし、生徒の自主性を鍛えるということで、いい判断でもあるのかもしれません。気にしてませんよ。


 あっそういえば先生。


 確か娘さんがいましたよね?(マジキチスマイル)



 とはいえ、追いつくのは無理だとしても、たどり着かなくてはいけません。


 ぶっちゃけ泣きそうになりながらも、一歩一歩足を伸ばします。

 ゆったりとした歩みではありますが、たしかに前進はしています。一歩を重ねていけばいいのです。


 そんなこんなで歩いているうちに、先生の背中を捉えました。

 追いつけたのかな? やればできるじゃん私。

 そう思ったのですが。


 体力が尽きた女子生徒に付き添っていただけでした。


 ……


 なんでわしゃあ置いてけぼりやねん!(男女差)


 辛そうに息を繋ぎながら、ゆっくりと踏み出す足は弱々しげで、私は自分のことを棚に上げて心配になりました。


「大丈夫?」

「だい、じょうぶ」

 明らかに大丈夫ではなさそうでしたので、私は再度声をかけました。


「そっか……がんばってね!」


 気が利かないですこいつ!


 まあ、男子中学生なんて、こんなもんです。


 遅れていた私も、女子生徒もなんだかんだで無事に頂上まで辿り着き、遅めの昼食をとって自由時間を満喫しました。


 さあ、下山するまでが山登りです。行きに比べれば体力的な問題は特にないです。


 けれども、前日に降った雨のせいで、ただの山道は危険なものに変質されていました。


「いてっ」


 ぬかるんだ地面、めちゃくちゃ滑ります。


 何回かひっくり返るうちに、周りから笑い声も漏れてきて、そんなに痛くはなかったので、転ぶことについて楽しくなってきました。


「転んだ回数30回達成!」

「……」


 まあここまで来るともう周りからも無反応でした←やりすぎ


 決してわざと転んでいたわけではないのですが、もうネタにすらならなくなり、ただ単に服をめちゃくちゃ汚しただけという、虚しい結果のみ残りました。


 で、翌日。


 取り調べを受けているかのように、強烈な光を感じて目を覚ましました。


 同部屋の三人がニヤニヤと私を覗き込んでいました。


 なんだろうと思うと、いつもイタズラをしているやんちゃなJくんが言いました。


「中々起きなかったからさ、懐中電灯を顔に当てたら顔をしかめるからおもしろくってさ」


 きゃー。


 男の子三人に弄ばれた……。


 まあ本当は「マジックで落書きしようと思ったけど、やめといた」と自重していたみたいなので、よしとしましょう。


 それよりも、次に言われた一言のほうが、なんとなく心にキました。


「お前さあ、




 誰よりも早く寝て、誰よりも遅く起きたよな」




 〜〜〜〜〜〜〜(声にならない叫び)


 わからない。別に何かを咎められているわけではないことはわかっているのですが、とてつもなく恥ずかしい!

 なんとなく恥ずかしい!




 まあこのような自然に触れるいい機会を得て、人は生きることの意味を学んでいくのかもしれません。


 空気を感じ、温度に触れることは、世界を理解する一助となったはずです。


 体験に、無駄なことなどほとんどないのだと思います。


 この体験は、私に新たなる価値観を与えてくれました。


 ありがとうございます。私はこの一件のおかげで





 無事に山登りが嫌いになりました。




 良いことばかりではない。


 そんなお話です。

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