コミュ障家族の非日常

 ケアマネ試験が終わり、晴れて自由の身ですひゃっほう。


 結果が無事とは言ってませんがね(恐怖)。


 とはいえ、心の重荷が降りたのは事実。これで心置きなく執筆活動に戻れるというものです。


 過去の素晴らしい栄光の記憶を語ろうと思いましたが、そんなものはないので相変わらず日常を綴ります。





 さて、我が家族は基本的にコミュ障です(唐突)。


 父親は仕事の引退後は家で引きこもり、小説を読んだり書いたりしています。友人と遊びに行ったり付き合いなんてものには、いかないです。


 母親は、友達がいません。少し怪しい会に出入りしたりはしますが(偏見)、友人としての人とは、私は会ったことがありません。というか遊びに行っている様子もないです。


 そんな中生まれた妹は、コミュ障の家族に甘やかされ、順調に捻くれて育ちました。


 コミュ障の両親と兄二人に囲まれるとどうなるか。ええ、コミュ障のサラブレッドです。しかも純潔です。


 家では好き勝手喋り出すのに、外部ではほんとに喋らない。愛想笑いもしない。そもそも雑談ができない。というか、する意味を見出していない。


 なまじ可愛いだけに、変にプライドが高く拗らせているのです。


 そんなところも可愛い←こういう兄がダメにする。


 世の中には息子や娘が友達や彼氏彼女を連れてきたら、あれこれ親切をしたり、いらん話をするものですが、そんな心配は我が家にはないです。


 誰か来たら、家族の方が逃げます(自分の家なのに)。


 まあ実の家族だからこそ、このように好き勝手言えるものですが、姉さん事件なのですよ。


 コミュ障+変人を拗らせている弟が、なんと彼女を連れてくると。


 我が家は大混乱です。


 弟の変人さを一言で言うと、私のことを兄者と呼びます。


 そのせいで、弟の友達からは、私は兄者呼ばわりです。


 歌が上手くて、背が高くて、そこそこモテるという彼女様はなぜかうちに挨拶にくるというのです。


 それじゃあ食事にでもという話になったのですが。


 前日になっても、具体的なことは何一つ話が出てないです。


 不安に思い、母に聞いてみました。


 私「食事行くっていってたけど、店の候補は?」

 母「おいしい天ぷら屋さんに行きたいって父さんは言ってたけど」


 場所を聞くと、市を跨いでいました。しかも14時まで。


 たまたま私はケアマネ試験があるので、遠すぎて間に合いそうにありません。


 私「さすがに遠すぎ。ほか候補は?」

 母「ないのよね。弟が来てから食べたいものを聞けばいいんじゃない?」


 ……。


 ほらやっぱり、ほらやっぱり!(強調)


 これ絶対にグダるパターンです。コミュ障ゆえに自分の意見があっているのかどうか過剰に気にして、なかなか物事を決定できないのです。


 候補がなくなれば、みんなこう言います。


 どこでもいいって。


 嘘つけ(怒号)。


 皆さま思いを秘めているだけで、表現しないのです。それで不満があったのなら後から言うのだからタチが悪い。


 私は毅然として言います。


 私「それ絶対グダるから、候補三つくらい出しておいて、そこから決めればいいよ」

 ↑お前も候補出せや。


 ……。


 私もコミュ障の優柔不断でした。


 不安しかないながらも当日は訪れます。


 試験を終えて家に帰ると、母親は弟と彼女様を迎えに行っており、父親と妹しかいませんでした。


 父親に、結局お店をどうするのかたずねます。


 私「行く店決まったの?」

 父「いや、なんもきいとらん」


 相談すらなかったのか……←コミュ障あるある。相談ができない。


 私「で、どっか行きたいとこある?」

 父「特に。弟が店を見つけておいてくれてるといいんだけど」


 なんで祝われる方が店決めんねん←コミュ障あるある、決められないから他力本願。


 私「絶対決めてないから」

 父「そうか」←コミュ障あるある、代案を出さない。


 これはグダると確信した私は、近くのランチで検索を始めましたが、5ページほどみたところでめんどくさくなりました(おい)。


 結果、前にもいったイタリアンのお店にしました←コミュ障あるある、勇気がないので新規開拓ができない。


 そんなこんなで、弟と彼女様が到着しました。


 顔を綻ばせたムカつく表情の弟(個人の主観です)と、彼女様を我が家の一員は一丸となって彼女様を出迎えました。


 距離を取りながら←コミュ障あるある。距離を詰めれない。


 我が家の愛犬ですら、尻尾を振って喜びを表現するのですが、完全に近づかないのです(犬までコミュ障……)。


 彼女様からすれば完全にアウェー状態なので、困ったように愛想笑いをしています。


 そんな中、父が助け舟をやりました。


 父「これ、アルバム」




 ごめんなさい。先に謝ります。




 アホなのかな?←コミュ障あるある。いきなり距離を詰めようとする。


 来たばかりの彼女様になんでアルバム見せんですか。「わー可愛い」とか初対面の親相手に言えるわけないでしょうに。


 いたたまれなくなったので、とりあえず食事に出かけることにしました。


 二人は私の車に乗せました。


 私「いやあなんか。





 本当にごめんね」←コミュ障あるある。不快な思いをさせたとすぐに謝る。


 彼女様「いえ大丈夫です。こうなるだろうって聞いてましたから」


 弟さすがです。


 事前に我が家は全員コミュ障だって知らせておいてくれていたみたいです。


 ネガティブな印象をつけることによって、マイナスな印象をそれほど抱かなくなるという高等テクニックです。


 私「この後の食事の展開って、わかるよな」

 弟「ああ。多分任せてたら誰もしゃべらないな」


 よくわかっていらっしゃる。←コミュ障あるある。集団でいる時に喋れない。


 私&弟「先に謝っとく。ほんとごめんなさい」


 彼女様の苦笑いが、脳裏から離れません。






 そしてレストランです。


 6人「……………………」






 ほらやっぱり!(謝っておいて正解)


 家の中ですら喋れないのに、アウェー空間の外食なんて、より一層周りを気にしてしゃべれないのです。


 とはいえ、無言で食事をするだけというのは、彼女様に申し訳なさすぎるので、とりあえず適当に会話を振りつつ食事です。


 弟もがんばって会話を繋ぎます。


 弟「えー何か彼女に聞きたいことはある?」←コミュ障あるある。直球。


 そこで、母親がほぼ初めて彼女様に話しかけました。


 母「うちの子の、どこが良かったの?」←コミュ障あるある。聞き辛いことをそのまま放り込む。


 ……


 それ聞くのかあ。参ったなあ。


 もう私にフォローすることもできませんが、彼女様はこんな答えづらい質問にも答えて頂けました。


 彼女様「えっと、確かに変わっているとは思いますが、そんなところが面白くて、優しいんですよ」


 はは。もう。



 結婚してあげてください(真剣な眼差し)。


 今の段階ではとても印象の良い子でしたので、お願いですから弟と結婚してあげてください。


 まあ拙く、繋がりが悪いながらも、なんとか食事も終了しました。


 彼女様の内心は正直な話わかりませんが、少なくとも家族にとっては好印象に映ったようです。


 私「こんなことを聞くのもあれなんだけど、なんで今日きたの?」←コミュ障あるある。言い方。


 彼女様「同棲させてもらうのに、相手の親に挨拶もしないとは何事だと母に言われまして。きっと母親にはどんな話をしたのって聞かれますね」


 私「そっか。ごめん」


 どんな話をしたのとか、もっとも聞かれたら困るやつじゃないですか。


 話してないんだもの(コミュ障)。


 私「お母さんには、とてもいい印象だったって報告しておいて」


 嘘は言っていない。何も言っていないだけで。


 彼女様「あ、ありがとうございます。それで食事代は?」


 私「大丈夫大丈夫こっちで払わせて。楽しいトークを提供することができないこちらにできることは、





 お金を払うことだけだから(カミングアウト)。お母さんにはこの発言は黙っておいてね!」




 我ながらこの発言は今年一番ゲスいと思います。


 彼女様「わかりました。報告しますね(にっこり)」


 あらなんてステキな笑顔。


 あはは。


 もしこの二人が結婚したとしたら、結婚式に私の席はないかもしれませんね(自業自得)。


 何はともあれ、人の出会いとは数奇なものなり。


 運命の出会いはどこから訪れるかわかりませんが、どんな出会いから思いを繋げていくかが、重要なのです。


 そこに意味を見出して、関係を深めるのは自分自身です。


 弟よ、がんばれ。


 新たなる幸せの形を掴むまで、兄としては応援しております。





 ちなみにお気づきでしょうか。


 結局、妹は一言もまともなセリフを発していません。


 これがコミュ障チャンピオンです。←コミュ障あるある。そもそも喋らない。




 一人の瞬間が一番落ち着く。


 それが遠藤家の日常なのでした。

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