夏の終わり、ちょっとした異変
何時もとは違う、妙な雰囲気に振り向くと、愛犬が、礼儀正しくお座りのポーズをとっていた。
パピヨンという犬種は、蝶の羽のように広がった、羽ばたいていけそうな大きな耳が特徴だ。
心なしか垂れ下がっていて、元気がないように思える。
愛犬がお座りすること自体は不思議でもなんでもない。
ただ、夕飯を食べ終わって、後はゆっくりと睡眠の準備を行う時間に、リビングにいることがおかしいのだ。
普段であれば、お気に入りの玄関で待ち構えている、小さなナイトとしての役割を自ら買っているというのに、どうしたのだろう。
きゅん、くうーん。
普段は滅多に行わない甲高い自己主張に、ますます不信感がつのった。
本当にどうしたのだろう。
こいつは、ちょっと困ったちゃんだ。
そこら中で粗相して、客人には吠えたくり、誰に似たのか、基本的に一人で家の中を守る役割を演じている。
抱っこされるのも、乱暴に撫でくられるのも嫌いな、微妙に厄介な愛犬。
いやいやそれでも、良いところもあるんだ。
犬は人間で言うと三歳児並みの知能があり、特に空気を読むということに長けているという。
誰かの機嫌が悪い時、落ち込んでいる時などは、そっと体を寄せて、何か言いたげに見つめてくる。
「まあまあ、僕でもなでれ。そして落ち着け」
そう言っている気がした。
そんなわがままでちょっぴり優しい愛犬が不安そうに鼻から抜けるような声を出している。
普段はこの時間には連れていかないが、軽く散歩をしてみたが、異変の正体はわからなかった。
ドーン、ドーンと定期的に爆発音が響き、屋根に隠れて見えないが、暗黒が一瞬赤に染まっていた。
そうか、花火か。
誰かがDVにあってるのかと思った(末期)。
ともあれ、プライドが高く怖がりな愛犬が、妙に甘えてきた理由に合点がいった。
家に戻っても、鳴り響く極彩音が怖いのか、少し離れては、また戻ってくる仕草を繰り返してきた。
やれやれ。
小説を書いていた手を止めて、ため息をついた。
しょうがない。今日くらいは、優しくしてやるか。
甘えた声を上げ続ける愛犬は、期待を躍らせたように、大きく耳を羽ばたかせた。
もうほんとかわいいーなでちゃうなでしちゃう君はなんでそんなにかわいいんだよもうもふもふ。(シリアスの限界)
甘えてくる愛犬くんかーわーうぃーうぃー。
もう食べちゃいたいふわふわした毛も、なでるのをやめた時の「え? やめちゃうの?(ウルウル)」って寂しそうな雰囲気をかもしだすところがそーきゅーとおーいえすあいむべりーはっぴー。
アイラビューフォーエバー。
すいません取り乱しました(手遅れ)。
決して思い出さないでください。
こんなことを言っているのは。
ただのおっさんであるということを。
今日だけは、これを書いているのは十代の美少女という設定でお読みください(最初に書け)。
今日一番大切なことは。
パピヨンは可愛い。
それだけを覚えて頂ければ、結構です。
あっちなみに。
花火を見に行こうと友達に提案したのは却下されました(寂)。
これは忘れてください。
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