コーヒー(ロミオ)とアップルティー(ジュリエット)

 皆様ご存知でしょうか、もう数年前の出来事にはなりますが、ダージリンコーヒーなるものが発売されていたことを。


 御察しの通り、紅茶であるダージリンと、コーヒーを掛け合わせた、ありそうでなかった幻想的な組み合わせの飲料です。


 その味としましては、コーヒーの豊かな風味に、わずかにダージリンの高貴で透き通るような味が、舌を踊らせる、とても優美な飲料なのです。


 好みはあれど、私は大好きでした。週3くらいで購入しておりました。


 この素敵な味を、なんとか家でも味わいたい。


 野望に燃えた私は、この味を自宅で再現することに致しました。


 しかし、コーヒーならともかく、ダージリンなんて高貴そうな代物、うちに置いてあったかしら?


 不安に思いながら、嫌そうに私の奇行を眺めている母親を尻目に、自宅を漁りました。


 五分もの時間を費やした捜索の末、ついに見つけました。


 アップルティーを。



 ……



 まあいけるな(確信)。


 ダージリンでなくとも、アップルティーだって紅茶の名を冠するに相応しい代物。


 ポ○モンで例えるなら、ピ○チュウとミ○ッキュのようなものです(別物)。


 インスタントコーヒーをスプーン2杯分投入し、お湯を入れて、アップルティーパックを仲良く同居させました。


 スプーンでかき混ぜ、全く別質の要素を持つ二つを、掛け合わせていきます。


 その姿は、まるで思いの通じ合ったロミオ(コーヒー)とジュリエット(アップルティー)が、鳥も飛び交う古の宮殿で、ダンスを踊るようだと、幻視致しました。

 ↑意味不明な例えをする彼は、疲れています。


 パソコンの前でコップを掴み、優雅な午後の訪れに心を弾ませながら「ダバダー」と違いのわかる男のテーマを口ずさみました。


 弟に見られてました。


「……」


 無言やめろよ!(錯乱)


 気を取り直して、カフェテラスでピサの斜塔とかを眺めているイメージに、気持ちを切り替えました。


 今の私は、セレブでアダルト。


 よし、行きます。




「あびゃびゃびゃびゃー」


 まずい(致命的)。


 押し寄せる酸味が、互いの意見を主張しあい、舌に触れた瞬間にわかる、不快な酸っぱさが押し寄せてきました。


 おっかしいですね。私には確かにロミオとジュリエットが仲睦まじく手を取り合う姿が見えたのですが。なに、夫婦喧嘩?


 諦めきれず、次の手を打つことにしました。


 人生において大切なこととは、失敗を重ね、最後には成功させることです。失敗の積み重なった末の成功は、今までの失敗を失敗ではなくしてくれます(いいセリフだけれども)。


 コーヒーをスプーン一杯(減量)

 ティーパック(長めに)

 ミルク(新規参入)

 角砂糖(新規参入)


 市販品で感じた滑らかさや甘みは、おそらく甘味料やミルクによるものです。


 そうであれば、甘みや滑らかさ成分を足すことは、成功へ近づくはずです。


 きっとこの二人なら、やっていけます。


 魔女の脅威を打ち倒した、ヘンゼルとグレーテルのように。

 ↑何度もすいませんが、彼は疲れています。


 いざ。




 ……。


 コメント、し辛い。


 まろやかで飲みやすくはなったのですが、ミルクと角砂糖が仲良くし過ぎていて、元の味が消えており、量を減らしたせいか、ロミオ(コーヒー)が家出しました。


 リベンジ。


 ロミオ(コーヒー一杯)

 ジュリエット(アップルティー短め)


 やはり二人には、元の鞘に戻って頂きましょう。


 話し合えば、きっとわかりあえるはずなのですから。


 飲みます。




 うん。


 ダメでした(吐気)。


 ロミオはとんだDV夫で、ジュリエットは鬼嫁でした。


 二人だけにした途端、自己主張が始まり、見るに耐えない大喧嘩が始まりました。


 もうこいつら仲良くする気ねーんじゃねえのか、と諦めの念も湧いて参りましたが、残念なことに、まだ私は立ち向かっていけました。


 ロミオ(少量)

 ジュリエット(短め)

 ヘンゼル(ミルクドバドバ)


 子はかすがいだと、古より伝わっている言葉があります。


 子供をなすことで、役割ややるべきことに目覚め、夫婦はより絆を結んでいくものです。


 ヘンゼルよ、離婚の危機にある二人を救いたまえ。




 ……。


 うん。


 ヘンゼルがグレーテました(これが言いたかっただけです)。


 ただの苦くてすっぱいミルクの生誕は、誰も得しないのでした。


 続きましてごめんなさいもう無理です。


 散々試しましたが、もうお腹がロミオとジュリエットで満たされまして、物理的に続行不可能です。


 まずいし(本音)。


 この時は断念いたしましたが、ロミオとジュリエットにかける情熱は、まだ燻っています。


 例え自己主張が強くとも、どうしようもなく喧嘩してしまっても。


 きっと人と人は。


 わかりあえるのだから。


 ご愛読ありがとうございました(打ち切り)。




 母「普通にダージリン買ってきてコーヒーとやればいいんじゃ?」


 そっか(論破)。


 次回はロミオ(コーヒー)とシンデレラ(ダージリン)でお送り致します。


 ご愛読ありがとうございました(打ち切り)。

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