第二話 紹介と哨戒
体育館の中では今日入学の生徒でしょうか、たくさんの人が捕まっていました。セキュリティどうなってるんでしょう。こんな未来になったのにどうしてこんなことになるのでしょう。
「お前らも不幸もんだよなぁ、ピカピカの入学初日にこんな悪役につかまっちまうなんてよぉ」
と黒服さんは言います。いえ、実際にはまだ捕まっていません。でも、きっと捕まってしまうのでしょう。こんな人間、放っておく訳がありませんから。残念です、僕の学校生活はこんな形で終わってしまうのでしょうか。体育館内には防弾ベストと言うのでしょうか、黒ずくめの軍人みたいな人が、おおよそ10人ほどでしょうか。皆さんがじりじりと詰め寄ってきます。
「悪役?面白い事言うじゃんね、にーさんよォ。」
語部君がしゃべりました。唐突に話し始めました。
「悪役気取って人殺さねぇにわか野郎なんざ、この物語にはいらねぇよ。」
訳のわからない事を言います。彼は一体何の話をしているのでしょう。
「はぁ?おい坊主、何の話してんだ?」
「いやなに、序列の話さ、手前らみてぇな汚点を、この物語に残すわけにはいかねぇ。」
やっぱりわけのわからない事を言ってます。言ってらっしゃいます。
「かかっ、その余裕が何に基づいてるかはいくらか予想がつくが、まさか本物の『序列』じゃあねぇだろうなぁ・・・。」
序列。そういえばそんな事も言ってました。それにしても本物?と言われてもあまりよく分かりません。僕の疑問の顔に気付いていないんでしょう、語部君は黒服さんを見ているままです。と、ずっと無表情を貫いてきた語部君の表情が崩れました。にやり、という表現が最も正しいような、何処か不気味な笑い顔になりました。
「当たらずとも遠からず、ってところだよ、自称悪役。俺の自信は、そんなとこからは出てねぇっての。」
淡々としゃべりますが、本当に大丈夫なのでしょうか、下手すれば殺されてしまうと思うんですがこの状況。
「俺の自信の源は俺自身だぜ黒服野郎。生憎、俺は被戦闘気質でな、喧嘩売られりゃ
買うだけなのよ。」
随分ととんでもない性格です。そんな言葉に、黒服さんは反応しました。最も、それは、ただ笑うだけだったのですが。
「抜かせガキが。俺はなぁ、人知超えた力もってんだよ、イヴってんだけどな。」
イヴ。イヴと言いましたねこの男、この黒服は。なるほどそういうパターンですか。
「へぇ、なるほどお前、イヴなんて持っちゃってるんだ、そうなのか。でもよぉ、それで上に立った気でいるってのは、いささか調子に乗りすぎじゃねぇの?」
「はっ、うるせえなぁ、手前みてぇな平民にごちゃごちゃ言われたく」
黒服さんは最後まで言い切れませんでした、最期まで。なぜってそりゃあ、黒服さんの右頬に、僕の拳が炸裂したからですとも。そして僕はしゃべります。
「笑って生きる、人形人間、幽零失。消失の0番に乗っ取り、消し去ります。」
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