親友と初陣 (弐)

屋上は風が強く吹いていた。

ここからは、町の向こうまでよく見えた。線路を走る電車、行き交う人々。代わり映えのない町に、煎は少しため息をついた。

「お前が俺の悩みを知ってるって?」煎は後ろを振り返り、明を見た。明は黙ってうなずき、鞄からペットボトルを取り出した。

「昨日、女とキスしたか?」明は唐突に言った。煎は頭を殴られたような衝撃を受けた。

「お前……」冷たい汗が、煎の頬を伝う。

明はペットボトルのキャップを開けて飲んだ。その瞬間、眩い光が放たれ、煎の視界が霞んだ。光がゆっくりと収まっていくと、明の隣には、着物姿の短髪の女が立っていた。手には二本の刀を持っている。煎は悪寒が止まらない。その場に立ちすくむ。

「俺を殺すのか?」

「それはさせない」

いつの間にか、煎の目の前に伊右衛門が木刀を構えて立っていた。

「伊右衛門……」

「一人にするわけがないであろう」伊右衛門は呆れ顔で煎を見た。

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