小早川 明

よく笑う子だなと、明は思った。


ペットボトルを飲んだ瞬間、目の前に美少女が現れたのには驚いたが、先祖代々小早川家の一族はこの戦いに協力してきた歴史があったため、そこまで混乱はしなかった。

明が冷蔵庫から出したショートケーキを美味しそうに頬張り、終始口角を上げて至福の表情をしている。彼女は『伊吹』と名乗った。年は15くらい。白地に朱色の刺繍が施された着物を纏い、髪は短めに切り揃えられている。


頬についたクリームをうれしそうに舐めながら、伊吹は明を見て笑った。

「明殿は……」

「明でいいよ」

「明は協力してくれるんだよね?」

「まあ、僕にも叶えたい願いのひとつやふたつはあるからね」

明は遠い目をして答えた。

「よかったー」伊吹は無邪気に笑いながら、明に抱きついた。

ぎゅうっと、胸が明の身体に押し付けられる。

「それは?」

明は伊吹の横に置かれていた二本の刀を指差す。

「これはね、双剣『両刃(もろは)』っていうんだ」伊吹は自慢げに答える。

「へー」明は不思議そうに、その二本の刀を眺めた。

「じゃあ、話をまとめようか」

明は抱きついたままの伊吹を引き離し、彼女の目を見つめた。

「これから、敵を探さなくちゃならない。敵はこの町に六人いる。それを14日間で倒さないといけない。でもその前に…………、

伊吹、君の強さを知っておきたい」

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