1日目、第7試合、後編

俺の闇魔法のかかったナイフは一直線に対戦相手である「毒有り林檎」に向かう













 





ことはなく、地面に落ちた。

…え?

な・ぜ・に?

「なぜだ…一体何をした?」

「やっとですか…死ぬかと思いましたよ。」

どういうことだ。

魔法か?

俺の「全魔法耐性」はナイフにはかからない、故に魔法を使われてる可能性はある。

しかし、さっきまでハッキリ言って素人のナイフで向かってきた奴が俺のナイフを地面へと落とすほどの魔法を使うのはおかしい。

「このトリックの説明は?」

「トリック?強いて言えば貴女の精神的な乱れとでも言いましょうか。」

精神的な乱れ?

貴女…この言葉に意味があるのか?

だが少し精神が乱れたところで、俺がナイフの操作をミスすることはない。

しかし、このままではあいつのペースだ。

早々にけりをつけよう。

「リミッター解除!ダークナイフストライク乱舞!」

俺の最強の技だ。

幾千、幾万のナイフをリミッター解除により一秒足らずで出現させ、闇魔法をかけて相手に総攻撃する。

単純だが、幾千幾万のナイフを避けるのは不可能だし、全てを弾くことも不可能。

一つ一つが普通の人を百人殺せるほどの威力。

これで決まり、そう思ったのだが、また地面に落ちた。

いや、違う。

地面に吸い寄せられた

「種明かしが欲しい」

「さすがにバレましたか…電磁石です」

電磁石?

「電磁石?」

「はい、詳しい説明は省きますが称号のことしか頭にない貴女に分かりやすいように言いますと、このフィールドは鉄で、それにエナメル線や銅線でコイルと鉄のここを巻きつける、といった方が分かりやすいでしょうか。もちろん、ここにはエナメル線だのコイルだのは用意できないので、元々あるものを少し改造したりして代用品にして、電流を流すと電磁石になります」

やばい、なにいってるんだ。

そんな俺の考えを知ってか探偵はため息をつく。

「んー、さらっと説明しますとこのフィールドが磁石になってるってだけです」

あ、分かりやすい。

最初からそう言えと思うんだが。

しかし、色々とおかしいので質問しよう。

「いつこのトリックを仕掛けた?」

「それは対戦相手公表されてからですね。時間に余裕はあったので、なんとか間に合いました。ナイフ使いということは知ってたので。もちろん、自在に作り出すことも。」

なんでばれた。

「にしては発動するの遅くない?」

「不具合があったので修正してました。」

なぬ。

不具合ってなんだ詳しく言えよ。

一体何をしくじったのか気になるとこではあるがさらに気になることがある。

「随分強気だな…」

「やっぱりばれてしまいますか…。感情は出やすいタイプでして。」

不思議だ。

相手もナイフを使えないということだ。

どうして強気なのだろうか。

「貴女、ナイフもなしの泥試合やりたいですか?」

「そんなことするぐらいなら降参してや…る…。」

しまった。

そういうことか。

「貴女は無様な試合をするくらいなら降参する。その事はヒントなら読み取れじゃなくて試合中に感じ取れました。」

…。

強い。

もちろん、ただの戦いでなら素人だ。

しかし弱点を探して把握し、それをもとに自分の勝ち筋を考え導きだす。

これは簡単そうかもしれないが実に難しい。

考えてみろ、殺し合いしてる途中相手の弱点とか呑気に探せるか?

勝ち筋を考えるか?

普通は考えない、ただごり押し同士で試合をする。

俺だってそうだ。

しかし、この名探偵は違う。

そこが、俺の敗因だ。

「皮肉なことですね、自分の称号のために、勝ちという称号を得られないのですから。」

「ああ。俺は父をなくした。称号だけのクズに。称号のせいで。父は称号によって殺された。それを今度は守るためでもある」

「守る?」

名探偵が会ってから初めてタメ口で声を発した。

「ふざけるないでください。ただ称号のことのみを考えて他のことを考えない。いつまでも亡き父の死にしがみつく。そんなあなたが一体何を守るんですか!?最初、私に「歪ませられない」とか言ってましたけどなんなんですか本当に!あなたが歪んでるんですよ!そもそも、その称号だけのクズにあなたが今なろうとしているんですよ!?いい加減にしてください。」

「…。」

確かにそうだ。

この名探偵の言う通りだ。

改めて考える。

しかし…

「駄目だ、俺は称号は捨てられない」

「…何故ですか?」

「俺は今、分かった。俺は称号は捨てられない。だって、それが俺の生きる目標であり、ロマンだ。」

俺は珍しく、本音が出てしまった。

「そうですか…それはもういいですけど限度を持ってくださいよ?称号しかないクズにはならないでくださいよ?夢見る冒険漫画かなんかの主人公と地位だけ貴族は違いますからね」

「ああ、善処する。それじゃ、降参。」

そう宣言すると、目の前が真っ暗になって意識を失っていった。










 



































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ガガガガガ…。

ゴリゴリゴリゴリ…。

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称号とはこだわるものだ 何かの世界一 @tt12

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