ちっぱくてぷるぷるできないの

「そこにある二つのたわわな果実が、濡れすぎたから体を振るうでないの」


 この台詞に、妻は、赤面した。


  ***


 妻のちっぱいエルフちゃんのネココは、言わずと知れたさすらいのライトノベル作家なのだ。


 たまに、外でさくさく書いて帰ることがある。


 所が、帰りが遅いので、ネココを探しに出たら、案の定、パワースポットにいた。


 ネココは、長いこと泉の水面を覗き込んでいた。


「落ちた鞄の中には仕事で使うタブレットも入っていたのに。おじゃんになっていないだろうか?」


 ならば、暫く、そっと見守ろう。


 夫として、イヌコは、妻のネココにも、何より自分で解決すること、自分で考えて行動することをよしとしている。


 納得の結果を導くのは結局は自分だからだ。


「ああ、やっちゃったなあ……」


 ネココはうなだれていたが、夫の気配を察知し、可愛らしくくるりと振り向いた。


「あ、イヌコたん。いい所へ」


 ちょっとだけ目が赤い。

 

「泉で洗面か?」


「もう、能天気なんだから。泉にお宅があるサカナコさんに取材中に、ここから、『サカナコくっきんぐ』を書きかけのまま落としてしまって」


「潜ってみた?」


「濡れるの嫌いなの。知っているでしょう」


 妻が、ふるふると首を振ると、耳もピコピコとなる。


 萌え~。


 ……ふぐは!


 正直になってしまった。


「顔がきゃるーんになってますよ」


「……ふぐは! 仕方ない、代わりに泉を探すかいのう」


 音も立てずに泉に足を入れて行く。


 これは、エルフの作法だ。


「おーい、あった。そんなに深くない」


 両手を大きく広げて、カモンの合図。


 できれば、抱っこ。


「ぬ、濡れちゃうから……」


 もじもじとする妻の恥じらいはたまらないものだ。


「そこにある二つのたわわな果実が、濡れすぎたから体を振るうでないの」


 この台詞に、妻は、赤面した。


「ちっぱくて、ぷるぷるできないの!」


 最高に、萌え~。





Finならぬ結……!

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ふた房のたわわな果実 いすみ 静江 @uhi_cna

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