@fu_shikaden

第1話偽

とにかく真面目な人間と言い表すのがもっともだろう。卒業アルバムの裏表紙やメッセージカードには優しい人と書かれていた。ついこないだまでの僕はそんな人間であった。幸いな事に裕福な家庭に生まれあまり不自由を感じることなく育った。言われた事をこなせば、褒められ誰かに咎められる事もなかった。親は世間体を気にし、僕を世の中に出して恥ずかしくない立派な人間に仕立てており、外見は恐ろしい程に気をつかわれ、また気をつかった。そのおかげかどうか、人と話すことが特別苦手でもなかった為に友達もできた。所詮人の中身なんて外の面だけで判断されるものであり、例へ心の中で何を思ってもその行動言動さへ正しければ問題は無いのである。八方美人のように誰にでも仲良く振る舞い社交的に過ごし、外見を整える人の方が人と話さずに自分の殻に閉じこもってる人よりいい人だと思われる、中身までも。その事に気づいたのは、中学1年の時だった。当時担任の先生は、いわゆる誰からも好かれる保護者受けもいい先生であった。ある日僕は係の仕事として、集めたノートを職員室の先生のもとに提出しなければならなかった。職員室までの廊下の長い道のりを歩く。既に放課後で殆どの者は、部活やクラブに勤しんでいる。上履きが廊下を踏み込む音が響き渡る。特に褒め言葉を期待してるわけではなかった。いや、感謝の言葉を今思えば待っていたのかもしれない。着いた。ドアに手をかける。少し騒がしい部屋の音がいつもより静かに聞こえる。先生の後ろ姿がみえる。部屋へ踏み入れようとした時だった。衝撃的な内容であったが詳しいやりとりは覚えていなかった。実際人は、大事なことでもわすれることがあるってことだ。だがそこで先生、いや彼は自分の生徒をなじるというよりタダのクラスという彼の王国の駒としか考えててないような趣旨を発言した。彼は受話器を置いた。時が止まったように感じた。血液がより多く頭に輸送されるように感じる、頭に心臓の脈動の音が響く。奴が来る、ここから逃げなければ行けない。直感というより僕の本能がそうさせたのだろう。ノートを連絡BOXに入れ、ぼくは、いつなんどきよりも速く走りその場を去った。ヤツはお面を被ったバケモノだった。ヤツはお面を被ったバケモノだった。わけも分からぬうちに家へとたどり着いていたようだった。帰宅して夕食を食べて風呂に入って寝る、なんとも無い日常へと舞い戻った。自分の内面以外は。翌朝アラームがなって起きた朝食のためにリビングへと降りる。家族と食事をする。僕は終始彼らの顔を見れなかった。笑顔が笑顔にみえない、本当は何を考えているのか、内面がみえない。僕の頭が勝手に彼らの顔にばってんを貼り付ける。「コイツらは、こんな事思ってない。それは嘘だ、偽善だ、お世辞だ。まだコイツらには、剥がしきれないとんでもない化けの皮があるのだ」とでも言うように。家にこれ以上いたら取り返しのつかない事になりそうだと思い、堪らず外に出る。まるで世界に不幸が落ちてきそうなどんよりとした曇り空だった。登校し、授業を受け、適当に放課後を過ごす。変わることのないはずの日常がタダの苦痛でしかなくっていた。この人は、本当は何を考えているのか、どんな思いを内に秘めながら話しているのか。果たしてその言葉が真実なのか、、、、人間不信とでも言うだろうか。割り切るまで約一ヶ月要した。結局の所内にどんな事を考えたとしても、たとえそれが嘘だとしても行動や言動さへ正しければどうってことは無いと気づいてからはすんなりことが運んだ。深く考える必要も無い。ただいい人を演じいいことをすればいいだけ。どんなに憎しみや苛立ちをかかえていても。

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