第4話

ついに来た。この日が……

体育祭、来てしまったのか。俺が暑い暑いとみやに訴えている間に校長の話が終わり、実行委員の話に移り変わった。実行委員は待ちに待った体育祭がやって来ましたとかなんとか言うだろうが正直やりたくはないだろうな。なんでかって?暑いからだよ。やりたくないのに無理に楽しみですねとか言わされるなんて、かわいそーだな、実行委員長よ。と、色々考えてたら始まった。さて、委員長の勇敢な姿でも見るか。俺はそっと前を向き大勢の前に立っている実行委員長の方を見た。

「皆さん、待ちに待った体育祭がやって来ました。(ほとんどいないと思うけど)ひとりひとりが全力を出せるように頑張って下さい。(私の分まで)」

……ん!?うっすらと心の声が漏れていたような気がするぞ!?実行委員長も体育祭がめんどくさいんだな、やっぱみんなめんどくさいんだよな、体育祭なんて暑いし辛いだけだもんな、うんうんとうなづく俺とは逆にクラスのヤツらは立ち上がり。

「うぉぉぉぉぉお!!!!!やるぞぉ!お前らぁ!目指すは優勝!スポ科になんて負けねぇぞぉ!!!」

やる気あるやつらいたわ。てかスポ科に勝つのは不可能だろ。うちのクラスそんなにスポーツに長けたやつはいないだろ。まぁ俺もやれるだけの事はやるか。


「蓮ーー!始まったよぉ!ついに体育祭始まったよぉ!」

テンションたけぇ付いてけない……

「おーそーだなー」

体育祭が始まっても俺は嬉しくともなんともない。やる気もなければ勝つ気もない。みんな頑張って勝ってこい!って感じだ。綱引きまでまだ時間あるし教室行ってやす……

「始まったよ!二種目め始まったよ!応援行こ!ねぇ応援行こ!」

楽しそうだね、こいつ今遊園地にでもいるのかな。

「丁重にお断りさせていただきます。」

「なんでよぉ!」

若干涙目でこちらを見てくる。この炎天下の中応援なんてしたら燃えちまうよ、真っ白にな……。

「暑い、声でない、俺の競技までに無駄にカロリーを消費したくない。以上の理由で断ります。何か問題あるでしょうか?」

「あり!大ありよ!」

「え、どこに問題があるんだよ。暑いのやだし声なんて張れないし俺の競技は綱引きとリレーだ。(お前のせいでな)体力の無い俺にはこの二つだけで精一杯だ、それにやる気のない応援をされても迷惑だろ。」

「ぐぬぅ、いいじゃない!いいじゃない!せっかくの体育祭なんだから楽しみましょうよ!」

あれ、なんかキャラぶれてね、この前までお淑やかじゃ無かった?それはまぁいいか。

「子供みたいに駄々をこねるんじゃ、ありません。俺は心と体を癒すために涼しいクーラのある教室に行くの。」

暑い。そう暑い。話を聞いている間ずっと暑くてもう汗ダラダラ。速くクーラーのある部屋に行きたーい。川崎の駄々をスパッと真っ二つにして俺は教室へと歩き始めた。その時だった。

「う、うぅ。一緒にみんなの事、応援しよ?」

ずるい。鳴き真似なんてずるい。こんなに人がいる中で鳴き真似なんてしたら俺が敵じゃないか。川崎の顔を見るとペロっと舌を出している。コイツ……

「おいアイツあんな可愛い子を泣かしてるぞ。」

「マジかよサイテーだな、冴えないくせにあんな可愛い子を泣かしやがって。許さねぇ」

おいまじかよ。簡単だな男ども涙に弱いんですかお約束すぎるだろ。

「応援、行こ?」

────はっ!しまった、ついドキッとしてしまった……。涙目でもう1度こちらを見てくる。この状況を見た男どもがこちらを睨んでくる。潮時……か。

「はぁぁ、しゃーねーなー、少しだけだからな?」

俺は大きな溜息をつきしょーがなく川崎の応援に付き合うことにされた…

「やった!勝てるように頑張って応援しようね!」

はぁ、めんどくせ……

「そうだな。二種目めそろそろ終わるな、三種目めから応援するか。」

「ううん、まだ私たちのクラス残ってるよ!今から応援始めるよ!」

フンッ!フンッ!と、凄く気合を入れている。それに引き換え俺はやる気も気合いもない。やると言ったからにはやるけど…やっぱめんどくさいな。うん。とか考えてるうちに俺らのクラスの番が来た。はぁやるかぁ。

「頑張れーふぁいとー」

「頑張ってー!山田くーん!頑張ってー!」

『はっ、川崎さんが俺を応援している!?クラスのた…川崎さんのために俺は!勝つ!』

「うぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!!!!」

なんだ山田のやつすごい速くなったぞ。これが川崎の力か。

「すごい!ねぇ見てみて!山田くんすごい早くなった!」

「あーそーだねはやいねー」

「ねぇなんかさっきら返事が適当じゃない?」

あれ?いきなりいつもの川崎さんっすか?いきなりテンション変えると付いてけないから辞めようよ…ね?

「そうか?俺は勝つために最小限体力の消費を抑えているんだが、だめか?」

嘘。もちろん嘘。俺が勝つためにとかあるわけないね。あ、そろそろ終わる。

「んん~まぁそうならいいけど…勝てなかったら帰りクレープ奢ってね♡」

「は?」

「クレープ♡」

「勘弁してつかぁさい。」

「勝てば良いんだよ、勝てたら私が蓮君にクレープ奢って上げる。」

「ちょっと本気で走ってくるわ。」

「よしっ」

「しまった!まぁクレープ一つくらいいいか……」

「あ、もちろんクレープはダブルアイスいちごバナナチョコトッピングにチョコチップ桃パイナップルメロンミカンなのでよろしく。」

ふっ、つくづくこいつには驚かされる……そんなのいくらになるんだ……

「それはいくらになるんですか?」

満面の笑顔で俺は聞く。

「値段?そんなのいくらになるか検討も付きませんわぁ。」

川崎も満面の笑みで答えた。

「ははっ、そんないくらになるか分からないものを俺に買わせようとしているのかい?まっくぅ、君には遠慮というのはないのかぁい?」

「遠慮なんて知らないですよぉ、絶対勝ちます宣言したんだからこれ位は普通ですよぉ♡あとぉ、何なんですかその気持ち悪い喋り方はぁ♡気持ち悪くて反吐が出そうですわぁ♡」

「あ?俺ァそこまで言ってねぇだろぉが謝れ俺のガラスのハートを傷つけたその罪は重いぞ?」

酷い俺そこまで気持ち悪い喋り方だったかなぁ(泣)

「あ、言い合いしている間に三種目め終わってんじゃねぇか。次……綱引きだ…。」

頑張るぞ(白目)と言って、俺は入場門の方に足を向けた。

「頑張って来なさいよ。」

そっと背中を押された俺は、強く、気合を入れて答えた。

「おう!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

灰色からバラ色に変わる高校生活 烏丸 ノート @oishiishoyu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ