第3話

なんで歩美を知っている。歩美は俺が幼稚園の頃から隣に住んでいる女の子だ。幼稚園、小学校、中学校と同じだった。高校も一緒に行くはずだったが、俺が落ちてしまったため離れてしまった。本当は一緒に行きたかったんだけどな…。とまぁ、俺が一緒に行きたかったか行きたくなかったかはどうでもいい。問題は何故川崎が歩美を知っているのか。いや、知っていても何も問題じゃないか?いやでもあいつがこんなに綺麗な銀髪の女の子に会ったら必ず何か言ってくるはずだ……

「柏崎さん?どうかしましたか?」

「あ!すまん。少し考え事してた。少し、聞いていいか?」

聞きたい。なぜ知っているのか。

「はい、もちろんいいですよ。」

こちらに顔を向けにこりと笑った。

「なんで歩美を知ってるんだ?この街に来たのは初めてのはずだろ?」

「ふぅ、本当に覚えていませんか?」

「なんの、ことだ。」

彼女は何を言いたいんだ、覚えていませんか?だと?俺は1度彼女とあっているのか?でも、知ら……ない。川崎 泉なんて名前の人は知らない。待て、ほんとに知らないのか?どこかであった事があるんじゃないか?記憶がほとんどない、小さい時。でもアルバムに彼女はいない、はず。今日探してみるか。

「悪いが、覚えてない…。」

「そう、ですか。そうですよね…。」

「あと、悪いけど、君と付き合う事は出来ない。」

「え?な、なんでですか!どうして!」

「好きな人がいるんだ」

「!!!、あ、そ、そうですよ……ね。蓮も恋の一つや二つします、よね。」

ふと彼女の顔を見ると頬に水が伝っていた……泣いている。綺麗な顔がグシャグシャになるくらい大粒の涙を大量に流した。俺はそれを、ただ見守ることしか出来なかった。

「うぅ、ひっく、お見苦しいところを見せてしまい申し訳ありません。」

「あぁ、こっちこそ…すまない……。」

「今回は振られましたが、次こそは成功させ、私のことも思い出して貰います。」

そう言って川崎は走っていった。


朝の事から時間は過ぎ、LHが始まった。お題は……

「体育、祭だと?この暑い中やるというのかこの学校は。」

そう、中学の時は9月中旬にやっていた。だが、この学校では6月下旬。もうほぼ夏と変わらない暑さ。こんな暑い中走ったらどうなるだろうか。お陀仏しちゃう。クソッ!種目はなんだ!必ず軽い感じのものを選ばなければ死ぬ!なんだ、何を選べばいい!はっ!綱引き!これだ!何人もの男達が集まっているんだ、大した力も入れずに入れた風に見せておけば楽に体育祭を終えることが出来る!よし!

「えーと、何か立候補はないかなぁ~」

「はい!綱引きに出たいです。」

「ん、おっけー、柏崎君は綱引きね、他はいないー?てか男子全員出しとくか。」

よし!安全確保ぉ!これで俺が倒れることは無い……

「あら、蓮君は走らないんですか?私走るところ見たいです。あ、丁度クラス対抗リレーが1枠空いているのでそこに入れてはどうでしょう?見たら蓮君出場する種目綱引きだけですし。」

え?ゴメンボクチョットリカイデキナイ。俺をクラス対抗リレーに入れる?だと!?断じてならん!そんなことはさせん!

「断る。そもそも種目は二つ以上出る必要は無いはずだ。なら俺は綱引きだけでいい。体力もないし足は遅……」

「蓮って50m7.2秒だよな。」

「おう」

おいこらモブ共何勝手に言ってやがるそんなに速かねぇよ7.5秒だよ0.3秒も速くするんじゃない。

「おぉ、はっやいじゃん!決まりね、よろしく蓮くぅん☆」

「ちょ、俺の意見は……」

「ん?知らない☆」

こんな事があっていいだろうか、強制的に入れられたぞ。いいのか。ダメだ!俺が許さん!

「先生勝手に入れるのは良くないと思います。走る気もないのに入れてはチームの邪魔になるだけではないでしょうか?勝つためには外した方がいいと思います!」

これでいい、勝つためならやる気のない選手を入れるわけがない。完璧だな。

「べっつにやる気なくてもいーんじゃない?誰もやんないんだったら、蓮、お前がやりなさい☆」

「……」

もうダメだ、先生が相手になっては打つ手がない……俺の、負けだ。

「はい、走りますよ、走ればいいでしょぉ~。」

これで決まった。丁度チャイムもなった、学校は終わった!帰ろう!俺は教室から逃げるように外へ出ていった。

「はやいですね。」

「うぉぉお!!!いつの間にぃ!?」

「教室を出る頃からでしょうか。先生が住所柏崎に近いな、教えてもらえ。とのことで付いてきました。」

「えぇ、まぁいいけどさぁ」

「何かありましたか?」

「いや、何も無いけど…めんどい」

「あらまぁ。」

「家どこなんだよ。」

俺達は歩き出しバスに乗った。てか俺ん家近いのかよ。

「なぁ川崎、お前ん家どの辺なの?」

「えーと、鈴波市南鈴町〇-〇〇です。」

「ふーん、ほとんど家のすぐそこじゃねぇか……って家の隣じゃぁねぇかぁ!」

色々喋っているうちに家に着いていた。そんなことはどぉーでもいい!真隣じゃあねぇか!

「お、蓮。帰ってたのっうわぁ!何その美少女!綺麗な銀髪~!どこから来たのぉ~

その制服だと連と同じ高校かぁ~。」

「おい……歩美…。川崎が引いてる。」

引いてる。明らかに。わかり易いな。

川崎は少し俺に近ずいて耳元で俺に

「あれがユイ!?昔と全然違うじゃない、てか昨日もあったのにもう忘れてんの!?」

「昨日も会ったって、喋ったのか?」

川崎は首を横に振る、喋ってねぇのかよ。

「目があっただけ。」

「うん。もし君のことを覚えてたとしても目が合っただけで思い出せるほど人間優秀じゃないぞ?」

「ねぇさっきから何コソコソ言ってんの?」

「あ!あぁ、何でもない。昨日越して来たやつらしいんだよ、で、この辺よく分からないからって俺が送ってきたら、この状況。報告は以上です。」

「ほっほぉ~う、昨日引っ越してきたんだねぇ。私は歩美、宜しくね!川崎さん!」

「う、うん!よろしく!」

彼女の表情は周りから見たら完璧に笑っている。だけど俺から見たら…少し曇っているようにも見えた。


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