第3話

夕方の事。学校の近くの住宅街。


…逃げなきゃ。

と、俺はとにかく逃げていた。

後ろには顔がいい男。多分同じ学校の生徒だろう。

だけど、その後には女の霊。しかも水子(流産などで生まれる前に死んだ子供の霊)つき。

「助けて…苦しい…助けろ」

と、男が呻いている。

いや。お前を助けたら俺も被害被るわ。こういう怨霊に何話しても無駄なんだからな!

と言いたいのを抑えてとにかく走る。

物陰に隠れて、男が見失うのを待つ。

ふぅ…ここなら大丈夫か?

と、そっと影から様子を伺う。

「助けろ…あの野郎…」

男はただ呟いている。


「おまたせ」

と、どこかで聞いた声が聞こえた。

すると、いきなり何かが飛んできた。

あれは?なんだ?

よく見ると、大きなカッターに見える。

女の霊は逃げるが、水子はカッターに串刺しにされている。

「ぎゃああああああおああああああああああ!」

と、ここら一体に子どもの泣き声が響いた。

そこには、うちの学校の制服を着たもう1人の男。違う点って言ったら、黒いコートを羽織って、黒い帽子を付けている。

夏なのに暑くないのか?と思うが、暑がる様子もあまりない。

黒いコートの男は何かを言っている。あまりここからじゃ聞こえない。

すると、黒いコートの男は大きいカッターを引き抜き、また振りかざす。

「…幽霊は生者に優しくしなきゃいけないよ」

懐かしい声が耳に残った。

この声は、低くなってしまったけど、丁度昼に聞いたからわかる。







…紛れもなく、ジルの声だ。









水子は動かなくなり、消えた。

男はジルと思わしき男にお礼を言い、走っていってしまった。

ジルと思わしき男は何かを言いかけたけど、興味がなさそうに歩いていってしまった。










昔。仲良し3人組だった俺たち。

泣き虫で引きこもりだった俺。

ガキ大将で問題児と言われたハク。

明るく優しかった不思議ちゃんジル。

ある日。ジルは引っ越してしまい、仲良し二人組になってしまった。


…だから、俺もハクも。

ジルの事をあまり。知らない。

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