第54話姉のせいで月曜が怖いわけだが
「だ、大丈夫?」
香玲ねえさんは僕の問いかけを無視し、体は打ち上げられた魚みたいに、二回ほど震えてからまた動きを止めてしまった。
「心霊現象なの?」
再び、僕の質問には何の反応もなく、メイド服を着ている香玲ねえさんはただ柔らかい布団の中へと沈み込み続けているだけだった。
「いいや、そのまま休んでてよ」
僕は彼女の足をベッドの上に移動させると、スカートの裾を少し引っ張り、もう少しで顔を覗かせようとしている尻を隠した。
ある時期の僕はしょっちゅう考えていたことだけれど、僕と香玲ねえさんは本当に奇妙な姉弟なのだった。
香玲ねえさんは度々おかしな行動に出るし、僕は僕でとっくに慣れてしまっていて、驚かなくなってしまっているばかりか、いつしか逆にそれを受け入れてしまい、僕たちの奇怪な姉弟関係を維持し続けて来たのだ。
けれど、僕はこの奇妙な五つ目の姉のことをとても気に入っているわけだ。
「好き過ぎてさ、毎回美術の時間で母の日のメッセージカードを作る時には、必ずねえさんのことを考えていたぐらいだから」
どういうわけか、僕はそんなおぞましいセリフを口にしてしまっていた。
「母の日のメッセージカードを持って来たりなんてしたら、私、私は……みっ、違う、七日は口きいてあげないから!」
明らかに香玲ねえさんはこの扱いに不満な様子だった。
「分かったよ……要らないならいいや」
「ばっ、バレンタインデーのだったら……いいけど……」
「いいよ、バレンタインカードを作るなんて美術の課題があればね」
「うん……」
月曜日、学校に行く日である。
同時に美術のグループ別発表のある日でもあった。
雲逸は隙を見つけて僕と小夢の間に何が起こったのかと質問してきた。
仕方がない、小夢の僕の対する態度はすでにはっきりと雲逸まで注意するようになってしまっていたのだ。
それは怒りとか恨みとかいったものではなく、無視であり、徹底的に僕のことを空気と同じように扱っているもので、早朝の自習時間ですら、昨日彼女が僕の家に置いていってしまった荷物を届けても、彼女は瞼すら動かさず、楊文泱とのおしゃべりを続けていたのだった。
僕の存在感はたぶん蚊一匹にも及ばなかっただろう。少なくとも蚊だったら小夢は手で叩くぐらいはしただろうからだ。
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