第53話姉と一緒だとそういうこともあるわけだが
「私に服を売った人は、メイドは男女間の楽しい感情を増進させてくれるって言ってたんだけど」
「楽しいよ、香玲ねえさん、ねえさんは本当に考えすぎだって。ねえさんは僕に対してほんと良くしてくれているんだし、僕は全部そのこと分かってるから」
僕たち二人の普段からの付き合い方そのままに、僕は向きを変えると、LOLをプレイすることによって現実逃避にかかった。
「だったら龍龍も金鈴ねえさんのこと怒っちゃだめだよ。ねえさんは生まれつき頭に来やすいんだから……」
香玲ねえさんは後ろから僕を抱き締めてきた。全身の重量が僕の肩の上へと圧し掛かけると、ゆるゆるとこういった…
「私が金玲ねえさんの代わりに謝ってあげるよ、私と握手して仲直りしよ」
この手の仲直りの儀式は、小さいころから今まで香玲ねえさんがだいたい百回以上は使って来た手だった。
仮にも自分の姉なわけだから、僕としても彼女の申し出を受けるつもりだった。
現在、僕の後頭部はほとんど香玲ねえさんの胸に埋まってしまっていて、快適は快適だったものの、僕はわずかにもがきつつ体を離すと、香玲ねえさんの前に向き直り、慎重かつ平和的な雰囲気で手を差し出した─
香玲ねえさんは手を握ると、不意にその手を引っ張った。
けれど僕の方が体格にして勝っていたために、彼女は僕ほ引き寄せることができず、反対に自分が僕の胸元へとくっ付いてしまうことになった。
「……これはどういう遊びなの?」
僕はバカみたいな調子でそういった。
香玲ねえさんの全身はふわふわと柔らかく、彼女は頭を上げて上目遣いに僕のことを凝視していた。
一組の深い、百も千もの言葉を僕に伝えたがっているかのような瞳がこちらを見ていたけれど、僕はどういう反応を示していいのか分からなかった。
「握手じゃ足りないよ……」
「じゃうどうすればいいのさ」
「き、キスして」
「……小さい時みたいに?」僕は少し気おくれを感じていた。
香玲ねえさんは興奮した様子で頷いた。
「わかった」
僕は頭を下げ、右頬を彼女に向けた。
香玲ねえさんは握っていた僕の手を放し、左右から僕の顔を挟み込み、そうやって僕の頭をしっかりと固定してしまうと、僕の口に自分の口を押し付けてきた。
口元がすこし濡れた。
「……」
僕は呆然としてしまった。
香玲ねえさんはまるで五千メートルを走って来たように息を荒げていて、今しがたの行動で体力を全て使い切ってしまったかのように、酔っ払いみたいに僕を押しのけると、その場で更に二回くるくると回り、最後にはゴミの山……いや、違った、僕の布団の上に倒れ込むと動かなくなってしまった。
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