第50話姉の嫌がらせがやりすぎなんだが
引き出しを開けた僕と小夢が互いに顔を見合わせた。中には小さくなった黒色のパンツが収められていたのだった。
「僕じゃない……絶対に僕が盗んだんじゃないんだ、僕であるはずがないよ」
パン!
平手打ちが僕の血の気を失った無力な弁解をぶった切った。
「あげてもいいけど、私に嘘吐いたりしないで!」
小夢は目尻に涙を浮かべてそう怒鳴った。
「……」
弁解はもう間に合わなかった。僕はただバカみたいに彼女が身を翻すのを見ながら、頭の中で彼女が僕に投げかけた言葉を反芻していた。
小夢は出て行ってしまった。何も持って帰らなかったところなどは、僕に対する失望と憤怒によって出て行ったと言わんばかりだった。
僕はまるで911事件で双子のワールドトレードセンタービルが倒壊するところを目撃してしまった幸運な生存者のようだった。
数秒間、本当に世界の終わりがやって来てしまったかのような感覚に襲われ、そうしてから僕は自分がいる場所がニューヨークではなく、今日はまた九月十一日ではないことを思い出したものの、あれに匹敵する衝撃は依然として消えていないのだった。
終わった。仮に僕と小夢との間にかつて僅かながら関係性があったとしても、今は全てなくなってしまったのだ。
知らず知らずの内に、僕の両足から力が抜け、床に崩れ落ちることになった。
「金玲ねえさん、これじゃやりすぎじゃないか」
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