第47話姉がいるんだぞ!ノーパンとか正気かよ!

 

「ごめんね。君のこと考えてなかった」


小夢は小さな声でそういった…


「男と女って生まれながらにして違うものなんだ、ぜんぶ私がちゃんと考えないでやっちゃうから……」

 

え?彼女は怒ってないのか?

 

「私の着替えの服を取って来てくれる?グループ別発表の内容はまた考えて来るから」

 

小夢は謝りながら僕にそう手伝うように頼んで来た。少しばかり惜しい気もしたけれど、手伝わないという理由もないわけだ。

 

僕は浴室を飛び出して行くと、部屋の中に駆け込み小夢が畳んでいた衣服を掴むや、耳を塞ぐ暇すら許さない雷鳴のような速度で浴室に戻って来た。


衣服を小夢の手に渡すことに成功すると、当然ながら僕としては中で小夢が着替えているのを見ていることはできないわけで、浴室の外で待つことになった。

 

どうしてだか分からないけれど、小夢はかなり長い間浴室から出て来なかった。

 

十五分ぐらいだろうか?


それとも二十分?


特段時間を計っていたわけではないけれど、ティッシュペーパーで今さっき僕が噴き出した牛乳をふき取り、更にクッキーを一包み食べ終わってしまっても、小夢はまだ姿を現さなかった。

 

僕が心配し始めた頃になって、小夢はやっとドアを開けて中から出て来た。

 

元のように紫色のTシャツ、黒のサスペンダー式のパンツだったものの、顔色の方はまるで違ってしまっていた。


僕は彼女がこんな奇怪な表情を見せているところなんて一度も見たことがなかった。


まるで腹を立てているような、恥ずかしがっているような、更に言えばどういうわけか、両手でがっしりと短いパンツを上から抑えつけているのだ。

 

「どうしたの?」

 

僕はまだ呑み込んでいないクッキーを咀嚼しながらそういった。

 

「き、君ね……」


小夢は嚙み切れそうなほど唇を噛み締めながら、しばらく間をおいてこれ以上ないぐらい小さな声でいった。


「私のパンツ……見なかった?」

 

パンツ?


どう見たって履いて出て来たのに、どこからパンツなんて話が出て来たんだ?

 

「は?」

 

「パ、パンツって下のなんだけど……」

 

「下着?」

 

小夢は両頬を真っ赤にさせて頷いた。

 

待て待て!

 

つまり今の小夢は、まさか何も履いてない……のか?

 

鼻血が僕の襟元に二つ染みを作った。僕はどうしてそんなことになるのか全く理解できなかった。


消えてしまったパンツであれずっと鼻血を流していることであれ、一貫して僕には全く理解できないことばかりだった。

 

「服の間に挟んでたんだけど、今みたらどこにもなくて……」


小夢は全身を苦しそうによじり、太ももをきつく貼り合わせていた。


「はやく探して来てくれないかな。もしかするとうっかり落としてしまっているかも知れないし」

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