第46話姉から警察の世話にはなるなと言われてるんだが

 

「行こうよ」


小夢はくすくすと楽しそうに笑ってみせると、シーツの下から真っ白な腕を伸ばして僕の肩をポンポンと叩いた。


「私たちのグループ別発表はきっとクラス一だよ」

 

今重要なのはそんなクソ発表なんかじゃないんだ、もし本当に金鈴ねえさんに小夢が全裸で僕のベッドに横たわっているところを撮影されてしまっていたら、皇玲ねえさんが僕をぶっ殺してしまうことは疑いようがない。


その画像を学校でばら撒かれてしまうだけで、僕の恥は永遠に残されてしまうことになるのである。

 

「どうしたの?まだ何か心配事?」


小夢は露わになっている両肩を竦めてみせた。

 

僕は便座の上に腰かけ、両手で元からめちゃくちゃになっていた髪をかき回した。

 

「私、今の君のその態度、嫌いなんだけど……」小夢は口をとがらせていった。

 

「僕は本当に心配しているんだ……」僕は渋りながらそう口を開いた。

 

「何を心配してるのよ?」

 

「正直に言ってもいいけど、お、怒ったりしないよね?」

 

「いいよ。怒らないって保証する」

 

「じゃあ……」

 

僕は深呼吸を一つして、肺一杯に空気を吸い込んだ。

 

「僕は君の体を見たり想像したりするわけにはいかないんだ。だって僕は体の中に救う獣のような欲望を抑えつけることができなくなって、君の体の上にそれを一息にぶちまけてしまいたくなるから。一回や二回じゃない、僕が満足するまで何回だって、だから君は……僕を誘惑するようなことはしちゃいけないんだよ。僕は本当におかしくなってしまうから。僕だって青春真っ只中の健全な男性で、君がそんな風にしているのは実際僕にとっては辛いことなんだ。僕は本心から悪人になんてなりたくないし、こんな歳から牢屋になんて入りたくもないんだよ……」

 

僕は心臓に穴が空くのを感じた、痛いなんて話じゃなかった。

 

浴室は静まり返り、小夢は頭を下げ、僕もまた頭を下げていた。

 

しばらくどちらも口をきかなかった。

 

僕からすればこれ以上話すこともなかったわけだけれど、小夢が黙っている理由に関しては僕には分からなかった。

 

常識的に考えれば彼女は悲鳴を上げて浴室から飛び出して行くべきところだろう。


 

「……私は君を牢屋に入るようになんてさせないよ」

 

「なに?」


 

小夢は突然そう言った。僕は彼女の言葉をはっきりと耳にしていたものの、その内容が衝撃的すぎるせいで、脳の回転が追い付かなかったのだった。

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