第43話姉がいなくても何か起こりそうな予感がするんだが
小夢は紫色のTシャツに黒のサスペンダー式のショートパンツ姿で僕の目の前を行ったり来たりしていた。
清純さの上に知性が加わり、彼女の身長がどうであれ、それが彼女をして無視できないようにさせているのだった。
彼女の今回の計画を掌握し執行する能力は、僕を感服させるものだった。
ほどなくして、彼女はとうとうシャッターを切るのを止め、ここまで撮りためて来た画像を検査し始めた。
徹頭徹尾僕のことには構わず、ただ視線を輪郭と色彩の世界へと没入させているばかりで、一方で僕は一人放り出されたパンダとなり、仕事が済んだのかどうかすら分からないまま、携帯電話でネットを見たり、画像を撮影したり、ゲームで遊んだりしていた。
やはりまだ不足していたようだ。小夢は僕の部屋のカーテンを調整すると、またカメラを手に何枚か写真を撮った。
正午近くになり、彼女はようやく頷き、仕事が完成したことを示した。
僕はほっとして大きく息を吐くだし、トイレに顔の化粧を落としに向かった。
「君の写真はもう決まったから、次は私の番だよ。李狂龍くん、私を素晴らしく撮影してくれるような良いアイデアはあるのかな?」
小夢も一緒にトイレに入り、手を洗いに割り込んで来た。
「君の言う通り撮るよ」
もっとも僕としては小夢相手にセンスを披露したくなんてなかったわけだが。
「その、ね……」
小夢は難しい顔をして、少し躊躇ってからこういった…
「ここって君以外にもまだ人が残ってるの?」
僕は頷いていった…
「三つ目のねえさんと四つ目のねえさんがいるよ。だけどねえさんたちは僕のことなんか興味ないし、一番上のねえさんがそもそも撮影して良いって言ってるんだから、気なんて遣わなくていいよ」
「じゃあ、安心だね」小夢は声を立てずに笑ってみせた。
「うん、じゃあ僕はどうすればいい?」
「シャッターを切ってくれるだけでいいよ。だけどまず服を着替えないとだから」
小夢はまた首を傾げて考えを巡らせた。
「バスタオル貸してくれる?」
「もちろん」
トイレを後にしながら、僕は小夢に感心していた。彼女は換えの服装まで自分で用意して来ていたのだ。
それに引き換え僕はこのグループ別発表の中で、一匹のパンダを担当した以外には、根本的に何もしていないのだった。
香玲ねえさん専用のパンダのバスタオルを取り出し、半分だけ開けたドアの隙間から小夢に渡してしまった後、僕は冷蔵庫の中から牛乳の缶二本とビスケットを手に取った。
小夢の支度が終わるまでに少し腹ごしらえをしておくつもりだった。
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