第41話姉の居ぬ間に自宅で撮影会というわけだが

 

家に戻った。

 

家の中は尋常でなく静まり返っていた。

 

僕と小夢は直接部屋に向かい、一秒だってその場に留まったりしなかった。

 

小夢は好奇心を刺激された子供みたいにあちこち見て回り、彼女の想像と実際の様子に不一致がないか調べている様子だった。


僕にはこの香玲ねえさんのパンダ部屋が彼女のレイアウトと合致するかどうかについては分からなかった。

 

「可愛い部屋だね。君のイメージそっくりだよ」

 

「うん……かなり女の子っぽい部屋だろ」

 

「君ってお姉さんと一緒に寝てるの?」

 

「違う」


幸いにも僕は事前にもともと貼り合わされていた二つのシングルベッドを引き離し、中間に箪笥を押し込んで隔離していた。


「ウチはねえさんたちが多いから、それで仕方なく部屋を共有しているだけなんだ」

 

「いいねいいね、私大家族の子って羨ましいよ」

 

「……はは」

 

僕はこっそりと天井の隠しカメラを見やり、何も知らないふりをして乾いた笑みを浮かべた。

 

小夢が運んできた荷物を開けてみると、中に詰まっていたのは見たこともないような道具ばかりだった。彼女はある種の集中した状態に陥り、太陽のようだった笑顔も引っ込めて、飛ぶようにして両手を動かし始めた。

 

「着替えて」

 

小夢は僕に目もくれないまま、白黒の衣装を投げて寄こした。

 

僕がその衣装を広げてみると、それはパンダの着ぐるみだった。道端で商店の客引きに使われているマスコットと同じように、僕の全身がそれに包まれている様子は、見たところかなり滑稽で笑いを誘うものだった。

 

「座って」

 

小夢は再度命令を発した。

 

僕はさながら一匹の大人しい犬のようなパンダとなって、まだ被っていない被り物を抱え、声も立てずにベッドの端に腰を下ろした。

 

小夢は指でファインダーを作りながら、僕には何がなんだか分からない顔料や化粧品を取り出し、一言も発しないままそれを僕の顔面に塗り始めた。


この時の僕たちは非常に近い位置にいて、僕はあからさまに心臓の鼓動が加速するのを感じることになり、果ては彼女の体から漂って来る淡い香りを嗅ぐことすらできた。

 

「動かないでよ……」

 

彼女がそういって僅かに口を開くと、僕はまたかすかな熱い吐息を感じた。

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