第40話姉が大人しいと怖いんだが
僕の惨憺たる有様を見ると、小夢は励ますようにして肩を僕にぶつけて来た。
彼女の目は光を放ち、いたずらっぽくきらきらと輝いていた。彼女は僕が以前、同級生の女子相手に告白しまくっていたことを聞いていたのだろう。
実際、こんなにもどうしようもない告白技術なんて、確かにそうそうお目にかかれるものでもない。
僕が自嘲気味に笑ってみせると、小夢もそれ以上絡んでは来なかった。
一緒に今週の土曜日に予定している、グループ別発表の細かな点について話が移った。考えていた通り彼女は非常に熱心に取り組んでいて、少なくない道具を準備していたようで、僕にも充分協力して欲しいといった。
もちろんその点については何の問題もなかった。
問題があるのはあの何人かの姉が手を出して来ないかということで、僕としても部屋の蛍光灯に仕込まれた隠しカメラのことを忘れているわけではなかった。
「安心してよ。ねえさんたちも大丈夫は大丈夫って言ってるから、土曜日はきっと順調にいくよ」
僕は口ではそんなことを言いながら、体の方は依然として寒気に震えているのだった。
陽光がまんべんなく降り注いでいる。
素晴らしい土曜日だったけれど、僕は戦々恐々としていた。
姉たちの態度があまりにも正常で、却ってあまりにも異常だったためだ。
誰も今日、客が来るということを口に出さず、まるでわざとその事を忘れてしまっているかのように、そもそもそんな話はなかったような態度を装っているのだ。
今日は早朝から、皇玲ねえさんは香玲ねえさんを連れて外出していた。彼女たちによるとだいぶ前に百貨店での記念セールに出かけようという約束をしていたということで、早い目に列に並び、開店と同時にセール品を手に入れようということのようだった。
記念セールをやっている時の百貨店というのは戦場みたいな場所だ。
これまで僕は姉たちによって特価品や限定商品を手に入れるために進路を切り開く犠牲として利用されてきたわけだけれど、今回に限っては……皇玲ねえさんはそんな提案はせず、早々に香玲ねえさんと出かけてしまったのだった。
自宅にはこれで三つ目のねえさんと金玲ねえさんだけが残されていたわけだけれど、彼女たちはいつも自分の部屋に引っ込んでいて、今だって例外ではなかった。
僕はその日二回目に家を出る立場となった。学校の校門で小夢と待ち合わせ、彼女が持ってきた大きな荷物の箱二つを代わりに持つことになった。
中に一体何が詰め込まれているのか、僕としては気になるところだったけれど、余計な質問はしなかった。
どうせ最初から、今回のグループ別発表は小夢が計画を練り、僕は実行するだけだったからだ。
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