第36話姉から外の女はみんな詐欺師だって教えられてるんだが
「龍龍、この家はお前のものでもあるんだ。お前が友達を連れて来ることには、私はもちろん何の意見もないんだよ」
皇玲ねえさんは自分の長い足を組み替えた。
「だけどそのクラスメートっていうのは男なの、女なの?」
「女子なんだ。先生がクジで、その場で決まっちゃって」
僕はそう釈明した。ケツは今にも爆発しそうだった。
「好きなの?」
皇玲ねえさんは助走なしにそう突っ込んで来た。僕はいくらかそのせいで面食らい、なんとか気持ちを立て直した。
「そんなわけないよ。普通のクラスメートだから」
「龍龍、こっち来なさい」
皇玲ねえさんは僕を手招きすると、僕を彼女の傍に座らせ、その場で僕の肩を掴んだ。
「ねえさんに言わせればね、正直なところお前がその子のことを好きか好きじゃないかなんてのはどうでもいいんだ。高校生という歳ごろでは異性を好きにならない方が難しい、そのことはねえさんだって理解してる……ねえさんがお前に期待しているのは、誰彼構わず付き合うのは止せってことだ。好きだっていう感情を我慢しろってことなんだよ」
「……どうして?」
僕は反射的にそう質問してしまったけれど、その理由については僕はすでに数えきれないほど聞かされていたのだった。
要するに「若い内は勉強こそ大事」、「彼女を作るなんてのは意味のないこと」といった類の話である。
「外の女はみんなクソったれだぞ。お前なんかすぐに騙されてしまうんだ」
皇玲ねえさんはスッとそんなことをいった。
「そうだよ。まさかおねえちゃんじゃ満足できないっていうの?」
香玲ねえさんがとうとう我慢できずにそう口を挟んで来た。
「彼女ができることだったら、私は全部できるんだよ。龍龍のどんな要求だって、私絶対満足させてあげられるんだから」
「……」
僕は香玲ねえさんの話は聞き流すつもりだった。
「それに」皇玲ねえさんは僕の頭を自分の懐に抱え込んでしまうと、ぐわっと曲げた人差し指を僕の頭に食い込ませた。
「お前は私たち五人のねえさんを全員嫁にするって約束しただろうが! 二言はなしだからな!」
「小さい頃のことは勘定に入らないだろ」
僕は濡れてしまった犬みたいに、全身をぶるぶると震わせた。
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