第35話姉が普通に隠しカメラを仕掛けてくるわけだが
金玲ねえさんの仕事は素晴らしいものだった。
僕たちの立場が違っていたところで、僕はやはり心の底から驚かされていたことだろう。
一個の親指ほどの大きさの隠しカメラが、天井の蛍光灯の中に、わずかな黒い点を遺して仕込まれていたのだ。
僕はにんまりと笑みを浮かべたけれど、声には出さなかった。
金玲ねえさんの計画は簡単なものだった。
僕の部屋の中に隠しカメラを設置することで、僕の一挙手一投足を監視するばかりでなく、僕に関する「秘密」の画像を撮影し、それを小夢に送りつけることによって、僕が作り上げたイメージを崩してやろうというのだ。
この隠しカメラを撤去してしまうのは簡単だった。だけどそんなことをすれば、金玲ねえさんに気付かれてしまう。
藪を打てばヘビが出るという状況だった。金玲ねえさんは二つ目、三つ目という具合に際限なく陰謀を繰り出してくることだろう。
僕としては何も知らないふりをしながら、カメラの前では聖人君子のように過ごし、金玲ねえさんに少しも材料を与えないようにする。
そう、それこそが僕にできる最も適当な対応だった。
けれどまだ一つ残されていた大きな問題が、香玲ねえさんだった。香玲ねえさんだけは予測が不可能な変数だ。その場その場で対応していく以外にないだろう。
夜になるまで、僕は平然として過ごした。
部屋の中に閉じこもっていたけれど、漫画を読んでいるわけでもなければゲームをしているわけでもなく、あらゆる禁制品には手も触れず、鼻をほじることすらしなかった。
みんなが夕飯を食べ終わり、それぞれの家事を終え、三つ目のねえさんと金玲ねえさんが部屋に戻って休憩し、皇玲ねえさんと香玲ねえさんがいつものように客間でテレビを見ているところまで待ち、僕は話を切り出すなら今が最高のチャンスだと判断した。
この時、僕の肛門にはロケット花火が突っ込まれていて、導火線の火がだんだんと僕の肛門に向かって近づいて来ているような状態だった。
いつでも僕に肛門から流血させられる状況であり、それを阻止することは不可能なのだった。
「皇玲ねえさん……今週の土曜日にクラスメートが課題をやりにウチに来るんだ。課題っていうのは……」
僕は微に入り細を穿って説明を行い、説明が終わるまで皇玲ねえさんは一言も発しなかった。
香玲ねえさんは傍で眉毛を曲げていた。どうも初めて僕のクラスメートが家にやって来るということが、彼女を困惑させてしまっているようだった。
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