第29話姉がいないと本当にスムーズに運ぶわけだが
僕はもちろん公然と学校でAVを放送しようというのではなかった。
モニターに映し出されていた映像は、すべて小夢の動画と写真だった。準備する時間がなかったせいで音楽はなしだったけれど、見たところ効果はそう悪くない感じだった。
絶対安静な階段で、僕が口を開くと、穏やかに声が反響した─
「僕がかりに変態だったとしても、君のことが大好きな変態なんだ。君にしか猥褻なことはしないよ」
僕たちの間の空気が固まってしまった。
小夢は無表情のまま、僕が昨日徹夜して作った映像をじっと見詰めていた。
「ウチは女性が多いんだ。僕はねえさんたちにこのディスクを見付けられるのが心配だったから、だから、だからこうやってディスクの上にAVのタイトルを書いて……『猛獣戦隊』のパッケージの中に隠しておいた。学校に持って来る前に、ディスクを入れ替えるのを忘れてたんだよ」
僕は小さな声でそういった。他の人間に聞かれるのを用心してのことだ。
「……中の、中の私の写真と動画はどこから持ってきたの」
小夢は口を開いた。両目に浮かんでいる色は依然として複雑すぎて読み解くことはできそうもなかった。
「学校のネットとかクラスメートのフェイスブックから落とした……僕が直接、じかに君の写真をとるなんてことできなかったから、他人が撮った画像を使うしかなかったんだ」
「もしこのディスクを他に人に見られたらどうするのよ? き、君はまったく……」小夢は僕を罵ろうにも、そうできない様子だった。
「大丈夫だよ。僕のねえさんたちはこんなディスクを見付けた途端に僕のことぶん殴るだろうし、二つ目のねえさんは今日本にいる。誰も気づかないさ」
あの『AV学園! 夢の教師と生徒の大〇交! 時間よ停まれ!』のディスクは、そもそも僕の部屋にあった空のディスクを持ち出しタイトルを書きなぐったもので、僕としてはそもそも金玲ねえさんはこの手の動画なんて見たことがなく、ただネット上でタイトルを適当に拾って来ただけだろうと踏んでいた。
AV学園と時間停止ものはそもそも異なるシリーズで、一つの作品の中にどちらも登場する道理などないからだ。
それでこの中に何も記録されていないディスクに、僕は今回の動画と写真を焼き付けたというわけだった。
「次に写真が必要だったら、私に一言いってよ」
小夢は見ればみるほど不満を募らせていた。
「この動画に使ってあるのって三十、四十枚ぐらいじゃない」
「うん、次からは気を付けるよ」
僕は心の中ですでに難関突破の成功を祝う音楽と爆竹を鳴らしていた。
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