第13話ホモじゃないけど親友と話していると落ち着くんだが
体育の授業は、数少ない好きな授業だ。
体育科の先生はかなり歳を食っていて、そのせいでいつも授業中にサボっている。
先に生徒たちに準備体操をさせ、グラウンドでランニングを一周させてしまうと、後は体育の担当生徒に準備室からバスケットボール一箱と十本のラケットとバドミントンの玉をとって来させるのだ。
後はほったらかしである。男子は自分でチームを作ってバスケをやり、女子は自分でバドミントンの羽を打っているだけで、体育科の先生はどこで避暑をやっているのかすら分からない。
どうせ何かあった時には、体育担当の生徒とクラス委員長たちが携帯電話で連絡をとり、電話をかければ、先生はまたどこからともなく姿を現すのだ。
だから僕は特に体育の授業が好きだというわけではなく、自由が好きだったというわけだ。
いつもは僕もスリーオンスリーに参加しているのだけれど、大部分の時間はブラブラして過ごしている。
雲逸は体育が嫌いだった。けれど奴もまたこの体育の時間を気に入っていた。学校のある場所に潜み、自分の好きなことができるからだ。
たとえて言うなら、「観察」。
奴のこの特殊な性癖は、高校二年に進級してからより厳重さを増していた。
いくらか鳥類の観察家にも似ているけれど、雲逸は良い角度をとれる場所、また人の目に触れない場所を見付けると、そこで一冊のノート、一本のペンを取り出し、全神経を集中させて観察しながら、頭の中で訳の分からない数値へと変換しながらそれをノートへと書き留めていくのだ。
もちろん……時にはスケッチの手法をとることもある。
ただ奴のこの嗜好はずっと秘密にされて来た。
なぜなら奴の観察対象というのが……
女子、だったからである。
雲逸の嗜好が僕によって発見されてしまった当初、僕がまず考えたのが、教官(学校内で軍事教育や生活指導を担当する国軍関係者のこと)に報告しなければというものだった。二学年の模範生徒李狂龍が野生の覗き魔を一匹捕獲、以てちょっとした手柄としようというわけだった。
けれど僕はゆっくりと理解を深めていくにつれて、僕にもまた唐突に奴の説明を理解する瞬間が訪れた。
雲逸がいうには、女性というこの生き物は、宇宙の最も神秘的な、最も不可解な存在であり、奴は一生涯を費やして、女性への探求と観察を続けていくつもりなのだった。
それに、この行為自体は絶対に変態的なものではないとも言った。観察とは非常に奥が深くまた高尚な行為である。
たとえば社会観察、動物観察、生態観察……などなど、すでに早い段階から地盤が固められ、偉大な学問となっているもので、ただ巡りの悪さによって、奴がただ女性の観察を好んでいるというだけに過ぎないというのである。
僕は反駁した。どうして男を観察しないのか?
奴はこう吐き捨てるようにこういっただけだった…
「そんな気持ちの悪い生き物なんて……」
そうしてから奴は僕の冷たい目に気付くと、また慌てて弁解を行った。女性を観察するだけですでに一生涯を費やしてしまっているのだから、実際のところ男を観察するような余裕はないのだ。したがってその機会に関しては他の観察者に任せているのだった。
奴は半日にも渡って説明を続けていたけれど、僕はすでに変態覗き魔の狂ったような弁解を聞くのに疲れてしまっていた。
最後に奴はクラスの女子生徒の観察資料をいくつか僕に提供し、僕は教官に報告するという考えを打ち消したのである。
けれど、僕がその資料を使い、何人かの女子に告白してみても、結果はどれも凄惨を極めたため、結局のところ雲逸が僕を罠に嵌めたのかどうかについては、いまだに謎のままなのだった。
今日の体育の授業では、奴の観察対象は三年のクラスだった。
僕たちは術科教室の最上階に陣取り、雲逸は望遠鏡で授業中の先輩女子生徒方々を観察中だった。この手の行為は体育の授業中にしかできないものだ。廊下に人がいない時しかチャンスはない。そうでなきゃ簡単に発見されてしまうからだ。
使い道の分からない水道管の上に座り、僕は退屈そうに飲み物を飲みながら、この瞬間の涼を楽しんでいた。
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