第15話 コンシューマ冬の時代到来

 リーマンショクが報じられた2008年末から2009年初頭、世間ではまだその影響が表面化していなかった。ゲーム業界は特に安穏とした空気が流れていたのを覚えている。



 理由は簡単で、1案件、1プロジェクトの開発期間が比較的長い為、その瞬間はまだ仕掛かりの仕事が存在していただけ。つまり、半年前に契約して開発開始した案件は、まだ開発期間が1年も残っている、なんてことがザラにあったんだね。



 僕達が立たされた苦境は何だったかといえば、丁度大きな開発が今正に始まろうとしていた矢先にリーマンショックが起こってしまったという、タイミングの悪さでだった。



 もしも仕掛かりの仕事が継続していたら、既に契約締結し予算確保済の案件をわざわざ頓挫させることの方がロスが大きくなるので、メーカーサイドとしてはとっとと完成させて市場投下してしまう選択をした可能性が高い。



 多くの企業が決算月としている3月が近かったことからも、その年の計画を年末時点で変更する可能性は低かっただろうな。



 しかし、僕達の案件は春開始、つまり4月から着手する予定のものばかりだった。仕込みとして期内に手を付けてプリプロダクション的なことはするつもりがあったんだけど、あくまで契約上の開発開始時期、対価の発生は4月から。



 となると、そこから少なくとも半年以上続くプロジェクトを止めることが出来るならそら止めますわな。経営判断として至極当然。



 大手メーカー各社が凄いなと思ったのは、翌期、翌翌期の計画を即座に変更し、発注先に頭を下げてでも身を守る体制に転じたことだ。このことは本当に、後々まで感嘆することになった。


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つづく

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生まれて初めて社員になった僕が職歴を振り返ってみる ヒズミ @death13th-overdrive

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