第8話 会社役員って何やんの

紆余曲折の末に会社設立に立ち会う事となった僕は、会社役員と云う立場を手に入れました。取締役と云うヤツです。知っていますか、取締役って何すんのか。当時の僕は本当に何も解っていない世間知らずの馬鹿でして、なんか大仰だナくらいにしか思っていませんでした。


 まあしかし、取締役が何たるかを知っていたとしたら、ホイホイ引き受けたりはしなかったのかもしれない事を思うと、知らなくて良かったのかもしれません。少なくとも、そこから12年かけて段々と取締役になっていった、のは間違いないと思います。


 何はともあれ開発。取締役になったその日から何かが劇的に変わるような事もなく、ちょっとした新鮮味と新しく借りたテナントの新装感が目新しいだけで、とにかくゲームの開発を立ち上げる必要がありました。


 当時、孫請けと云う形ながら数千万円規模の案件を任される事が決まっており、しかしながらプログラマを擁する組織ではなかった為、早急にプログラム実装を受託(ひ孫請け)してくれる会社を見つけなくてはなりませんでした。


 僕自身、グラフィックに拘りを持ってはいたものの、営業的観点や発注先のアテなんかも一切ありませんから、ただただポカンとしてしまう有様でした。しかし、社長は違いました。


 どこからともなく立ち上がったばかりの会社情報を入手してきては、片っ端から逢いに行っていたのです。10件も逢えば、肌が合う会社とそうでない会社の違いも見えてくるだろう、と云うザックリ勘定で動いていました。そしてそれはもう超正しかったのです。


 幾つめかの会社を紹介してもらい逢いに行った所、世代的には自分達よりも10年ほど上の人達が作った会社が見つかります。仮にB社とします。このB社は設立したて、とは云え大手パブリッシャの元K社OBの集団でした。表立った動きを全然していないながら、技術力がべらぼうに高い人々だったのです。


 よくこんな人たちを見つけて来たな、と思いました(後でご本人達に聴いても、よく自分達を見つけられたなと感心しておられました)。


 こうした高機動型営業が得意技の社長だったので、役員の僕がぽやーんとしていても、次々と会社間のコネクションを構築していきます。


 僕はただただぽやーんとしていた訳ではなく、受注した案件のアートディレクタ的役割を形作る作業に没頭していました。


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つづく

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