第5話 実家で仕事は出来るのか否か
無理でしたーー!全っ然無理でしたーー!!!仕事場と云う物が何故存在しているのか、この時僕は知ったのです。自宅で仕事をするにあたって克服しなければならないハードルは全部で3つです。
1.仕事の邪魔になる誘惑要素を排除出来るか
2.仕事を開始する時刻と終了する時刻を守れるか
3.家族が仕事のペースに理解を示してくれるか
僕が克服出来たのは、「3.」だけでした。つまり、自分の意志が無関係な部分だけ……でした!!!意志薄弱過ぎて自分がより愛おしくなったのは云うまでもありません。「1.」「2.」を排除出来なかった結果どうなったかと云うと、生活のリズムが無茶苦茶になり不健康になりました。まあ、概ね想像はついていたので、やっぱりなーと云う感じでしたね。
毎日朝の8時まで深夜仕事をして、そこから夕方5時くらいまで寝ます。起きてからシャワーを浴びご飯を食べて気がつくともう夜の8時、さーぼちぼちやるかなー、と仕事に向かうも最低1時間はネットで遊びます。9時にやっと仕事を始めますが、2時間後にはテレホタイムが始まる為、またネットで1時間遊びます。深夜12時を超えるとやっと本意気のやる気がムクリと膨らんで来て、そこからは超集中状態で走り抜けます。気がつけばまた朝の8時。
こんな働き方あかんよ!
まあ、そんな生活が1年くらい続いたんですけどね。意外と続けられるもんだねー。ビックリするよねー。ある意味規則正しいと云えそうですな、それはマヤカシです。このタイムテーブルは誰からも文句を云われないので、自由に改変され続けるのですから。
さて、そんなスタイルのダメダメ・フリーランサーは、2年目にして、事務所を持つ事になります。と云っても自分1人だけの事務所ではなく、同じフリーランサーで寄って運営する共同事務所です。僕に仕事を紹介してくれていた営業肌の元デザイナーと、彼のルームメイトであるゲーム企画マンと、僕とで、3人の共同事務所です。
家賃は折半、専用電話を引いて電話料金も折半、レーザープリンターは折半で購入し、その他雑多な備品はそれぞれ自腹、と云うルールです。
普通の3Kマンションを借りました。家賃は共益費など込み込みで10万円ですから、1人33,000円/月です。備品を含めても、5万円/月もあれば1人分はまかなえます。まだ実家住まいでしたから、家にも10万円くらい入れたとしても、15万円/月の生活費でなんとかなります。
イケそうじゃね?
細かい事を心配しても道は開けない!と、無根拠で無自覚な自信を元手に、僕は誘いにノって事務所を借りる事にしました。
これで、今までの自堕落な生活から抜け出してまっとうに働けるかも?!
はい、無っ理ー!!
場所が変わって、電車通勤という名の自由時間が増えただけでした……。電車通勤中は、昨今のようなスマートフォンなどない時代でしたから、主に読書時間にあてられました。
ハヤカワ文庫を吐くほど読んだった。
これはこれで充実した時間でしたし、後の人生に大きく役立ちましたから良しなんですが、生活時間はただれたままです。事務所は普通のマンションですから、畳部屋なんですね。押し入れもあるんですね。あまつさえ風呂まであるんですね。
多くを語る必要はありますまい。仕事場に居ると云うだけで仕事をしている気分になる錯覚も大いに手伝って、まーとにかくダラダラしていました。
もちろん納品だけは守らないとお金を貰えませんから死守するのですが、納期直前以外はズルズルでした。ほんまあかんと思うわ、反省反省。
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つづく
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