第3話 時代は3DCGを求めていた

PlayStatioonが発売されてしばらく経った頃でしたね。FF7辺りで一旦のピークを迎え、とにかくゲームってのは3DCGが不可欠なのだ!という時代。本当は不可欠でもなく、なんだったら要らないんですけどねw。


 でも当時の空気と云うやつは、3DCGムービーが無いゲームなんて時代遅れ、みたいな感じが蔓延していたのです。


 ゲーム本編のリアルタイム・ポリゴンを扱う事にやや飽きて来ていたのと、映画が大好きで演出やカメラワークなどにも興味を持っていたものですから、結構向いてるんじゃないかな〜と思ったんですよね。


 結果的にムービーの仕事は、これまでで最高にエキサイティングでした。


 それまでは描画コストを気にしながらポリゴン数を調整したり実機上での細かな変更をチクチクと繰り返してクオリティを上げていくイメージでしたが、ムービー制作においてはポリゴン数など気にする必要が一切ありません。


 ポリゴン数など気にする必要が一切ないんです。


 最終出力されるムービーデータの圧縮率と尺の長さだけが容量を決定する要素なので、映像そのものをどう作ってもイイわけです。ただし期間内であれば、だがな……。


 僕がゲーム開発時に作った、出来がたまたま上手くいったキャラクタ・モデリングのデータが評価されて、ムービー・チームに配属直後にして、とあるタイトルにおける敵勢力のラスボスと巨大召喚獣のバトルシーンを担当させて貰える事になりました。


 こんな待遇に落ち着いていられるでしょうかいや無理です不可能です。僕は脳内が完全にお花畑状態になってしまい、またもや時間を無視して働きまくってしまったのです。


 おかげで、完成したムービーもクライアントの意向に沿うことが出来たようです。有難い事に、僕が作ったキャラクタのレンダリング・イメージがディスクの表面にプリントされる、ピクチャディスクなるモノも発売されました。


 この世の天国3 EX!


 この時ばかりは本当に嬉しくて嬉しくて、このチャンスをくれた会社に超感謝したものです。


 それから数本のムービー制作に関わった後、自分の人生の予定が少し遅れていた事を思い出します。ムービー制作に寄り道した事で、大手開発会社を離脱する時期が後ろ倒しになっていたんですね。


 人間関係は良好でしたし、担当させて貰える仕事の質にも不満は全くなかったのですが、上司にあたる社員さんに辞意を告げました。同じ環境でこのまま緩やかな上下動を続ける事に焦燥感のような物を感じていた僕は、辞めるしかないなーと感じていたのです。


 そして、ココからは本当に自分で仕事を探し交渉し契約し制作し納品する、ガチ・フリーランス時代に突入します。


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つづく

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