第2話 個人外注期
会社の取り決めに寄るので一概には云えないのですが、アルバイトの場合は基本的に雇い主が雇用した従業員扱いなので、保険の適用が可能なんですね。あと、労基法に守られた労働者の権利なんてのも、辛うじて存在しています。
一方、個人外注てのは従業員ではありません。雇用者は発注元となり、案件単位で仕事を発注して僕は受注するわけです。つまり、時間給ではなくなります。
云い替えると、早くやっても遅くやっても同じ金額が貰えるわけですね。しかも、従業員ではありませんから、納期内にキチンと納品出来るなら、更に別の仕事を受注したっていい訳です。
ん?この世の天国2?
そして個人事業主と云う存在にクラスチェンジすます。新規アビリティは、毎月請求と確定申告です。なんか大人感でまくりです!
よーしお父さんがんばっちゃうぞー、と結婚した事も子供を持った事もない僕はテンション爆アガリです。そして、モデリングやらドット絵制作やらレイアウト切りやら、ガツガツ仕事をこなしていきました。
あれ?他の仕事なんかやる暇なくない?
大手ゲーム開発会社からはプロジェクトの最初に注文書をいただきます。この注文書にある品目は「『○○○タイトル』デザイン作業」、数量は「一式」、金額は開発期間×1ヵ月分に相当する額面(¥250,000-)です。8ヵ月のプロジェクトだったら、¥2,000,000-ですね。
……。
これって、物量が明確じゃないし何時間仕事しても終わらなくね?
大人の世界は怖いですね。こんな事を説明してくれるワケでもありませんから、契約時点でその事に気付けるはずもなく、ただただ「他の仕事やってもいいんだよー」と云う事実だけが告げられ、あたかもこの世の天国で君は今後ウハウハだよ的な空気だけを漂わせてくるわけです!
今なら、期間拘束じゃなく成果物ベースで注文いただけませんか?とは云えますけど、当時はまだツルッツルの脳味噌ですからそんな事出来ません。
かくして僕は、保険や源泉徴収や年金が差し引かれない剥き出しの¥250,000-/月、と云う報酬でプロジェクトの最後まで働き続けたのでした。でもまあ、アルバイトのままで居たらもっと対価は少なかったと思うのでこれはこれでいいかなーと云う気分になったのも事実です。そんな状態でしばらくゲーム開発の仕事を続けていたところ、ムービーを造る仕事に充てる人員選抜があり、なんとか奇跡的にその役割に滑り込む事に成功します。
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つづく
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