遅くなった世界で

雪音

Episode01

雨、が降っていた。その日はちょうど折りたたみ傘を忘れた日であって、放課後の校舎を一人孤独に歩いていた。特に宛があるわけではないのだがあの異臭漂う下駄箱にずっといるよりかはマシだと思ったからである。と言っても宛がないまま歩くにも限度がある。そう思った頃、図書室の電気がついているのが目に入った。ちょうど良い、あそこで雨が止むのを待たせてもらおう。そう思い図書室の方へ向かって行く。「にしても誰もいないな‥」と独り言を呟きながら。図書室まではすぐ来れた。うちの校舎はさほど大きくはないがやたら敷地が広いのでグラウンドや体育館、プールに食堂といった場所に行くのに時間がかかる。特に体育の授業の時には走っていかないとまにあわないレベルでほんと勘弁してほしい。(俺はインドア派なんだから疲れるのやなんだよね〜)と思いながら図書室に入る。図書室は他の場所とは違って狭かった。とは言っても本の種類は意外と豊富でそれなりに最近の話題作も多かった。そのことに感心しつつあたりを見回す。やはり誰もいない。(確かに放課後に図書室に来るやつは少ないとは思うがここに来るまでの廊下、教室においてすべての場所に人がいない。)「何か変だな‥」と言っても俺は超常的な現象には興味がない、と言うか信じてない。「ま、雨だからみんな帰ったんだろう」そう言い聞かせた。それから誰とも会うことはなくただ時間だけが過ぎていった。雨は止む気がないらしい。「これなら走ってでも帰ってシャワー浴びてたほうが良かったな…」なんて愚痴をこぼしながら本をもとの位置に戻し帰りの身支度を始めた。図書室の電気はつけっぱなしにしてしまっていたが後で図書委員か教師が消してくれるだろう。そんな事よりこっちは雨の心配をしなければならない。生憎と雷までなり始めて天候はさらに悪化。「仕方ないな、校庭突っきて行くか」頭の中でルートを再確認。(よし、行くか)俺は雨の中、傘をささずに走り出した。ワイシャツが雨で濡れ身体にくっつく。(気持ちが悪い‥)何だかんだで校庭の真ん中あたりを過ぎた頃、それは何の前ぶりもなく堕ちてきた。何が起きたのか一瞬わからなかった。ただいきなり体が言うことを聞いてくれなくなって、それから‥それから‥あれ…おもい‥だせn…い……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

遅くなった世界で 雪音 @yukinekureha

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る