第3話 傘
「ご注文はどうなさいますか?」
「キャラメルフラペチーノひとつ。」
「サイズはどうなさいますか?」
「Mサイズで!」
「そうしますと……トールサイズでございますね!」
「…はい、それで。」
(クソ恥ず…やってもーた…)
それからは記憶がない。
僕はフラペチーノ片手に座席を探した。
最近出来たばかりなのか、
ほとんどの席が埋まっていた。
雑談しているママさんたち、
若いイチャイチャカップルや
スマホを弄る大学生。
僕はなぜかこの雰囲気が好きだ。
更にはドヤ顔でMACを開く若々しい
サラリーマンまで。
マ〇クに行けよと思ったが
今のは自分でも寒いと感じた。
心の中の僕を
けちょんけちょんにとっちめた。
店を出る頃には霧雨になっていた。
傘を閉じ、蒸し暑さが立ち込める
アスファルトをひとつひとつ
歩き始めた。
気分がいい時は音楽を聴きたくなる。
雨の日には必ず聴く曲がある。
秦〇博がカバーした大江〇里の「Rain」だ。
イヤホンから流れるイントロから
なんだか心地が良くて、ふと口ずさんでいる。
"どしゃぶりでもかまわないと
ずぶぬれでもかまわないと"
この潔い歌詞が好きだ。
きっとこの先も。
雨の日がとても愛おしくなる。
テレレッテッテッテッテ!
テレレッテッテッテッテ!
姉から着信が入った。
「けんちゃんいまどこー?」
「チューハイ冷やしておいたから早く帰っておいで。あ、イカ買ってきて!」
「あたりめね!あ・た・り・め!」
「…(昼から飲むのかよ) はいよ。」
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