第3話
12月25日。つまり、俺とレイが初めて出会った日。つまり、本屋で木更津唯香と出会った日。あれからもう6日が立った。
そして今日、12月31日。1年間のしめくくり。大晦日。俺とレイは何をしてるかというと大掃除をしていた。
「うぅ~。かいくんもうつかれた~」
「疲れたって。お前まだ窓拭いてから30分位しかたってないだろ」
そんなことを話しながら掃除機をかけ終わった。
「レイー。これから洗面所の方掃除してくるから、1階がおわったら2階の窓も頼むぞー」
「はぁ~~~い~~」
そんなレイの脱力した声をきいて洗面所の方へとむかった。
――—昨日買ったやつ出すか。
あれから午後4くらいまで掃除をしてやっと終わった。
「ああぁぁー。やっと終わった。かいく~ん、私疲れたからひざまくらして~」
――—はぁ?
「何言ってんだ、このアマ」
「かい君かい君。最近私への扱いひどくない。ねぇーかい君はなしきいてる?」
「悪い悪い。つい本音言ってしまてごめんごめん」
「あ!!今本音っていった」
そんなことを聞きながしながら、冷蔵庫まで行きアイスを一つをくわえ、もう一つを持ってレイのいるリビングまでいった。
「ほら。膝枕はできないけどこれで勘弁してくれ」
そういって、手に持っていたアイスを例に渡した。
「ふふ、ありがとう。恥ずかしがり屋のかい君」
「う、うるせい」
その笑みはまるで別人ようだが、確かにレイっぽく微笑んでた。
「そろそろだね。かい君」
「あぁ」
そう。そろそろ年が明けるのだ。
今の時刻は23時55分。年明けまであと5分。
テレビでは紅白に別れた男女の歌番組がそろそろ締めに入ろうとしている。
「ねぇかい君は一体――—」
その先は言わないでくれと思った。
何を怖がっているかなど簡単に想像できてしまう。
「———なんでおそれているの?」
そう、俺は恐れているのだ。この、12月31日を。
12月31日。この日は1年の締めくくり。全てが終わる日。
だからこそ俺は恐れた。もしかしたら、締めくくられるのではないのかと。何らかの力によって俺とレイの関係は夢なのではないのかと。
「え、」
言葉が漏れた。
なぜ、言葉が漏れたのかというと抱き着かれたからだ。
後ろから優しくだきつかれた。
出会った日からスキンシップが激しかったがここまでは激しくなかった。
俺とレイの距離はほとんどゼロだ。
顔は離れてたがそれでも10cmあるか、ないかの距離。
体なんか完全密着だ。
――—ちかいんですけど。ちかいんですけど。あ、なんかいい匂いがする。
「かい君は、12月31日を過ぎたら私が消えるのではないのかと思ってるかもしれないけどそれはないよ。———それに、消えるのはもうすこし後だろうし…」
「え、それってどういう―――」
その言葉の意味を聞くことはできなかった。なぜなら、ちょうどその時テレビからのおとでじゃまされたからだ。
時計を見ると12時になっていた。
「どう、かい君?私消えてる?」
恐る恐るレイを見ると、そこにはいつも通りニッコリしているレイがいた。
「いや、消えてないよ」
「そう、それはよかったよかった。…あとそれと…」
そういい、レイは一息ついた。
「あけましておめでとう、かい君」
「あぁ、あけましておめでとう、レイ」
こうして、俺たちは年をあけた。
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