【第3話】絶望的状態からの脱出を目指して

回りを見てみると、皆同じ表情だった。


今、一体何が起こっているのかが分からない。


(人を殺さない限り、永遠にゲームは終わらないだって…?)


それに、このゲームは政府が主催している。


つまり、この館から出られない。助けを呼ぶことも出来ないということだ。



「皆さん、一旦落ち着きましょう。」

隣にいた紳士的な男性が声をあげた。


「この状況で落ち着けって言うのですか?」

メイド服のようなものを着た女性が言った。


「そうですよ!人を殺さないとここから出られないなんて聞かされたのに…!」

その隣にいた女性が言った。


男性は二人の話を聞いてから続けて、

「確かに殺さないと、ここから出られないかもしれません。でもそれは、この部屋にいる者同士が殺し合えという訳ではないです。

皆さん、館手帳デバイスの館の掟を見てください。」


館手帳デバイスを起動して館の掟を見てみた。


「それの〈その1〉と〈その2〉の項目を見てください。」


僕は見てみた。


〈館の掟 その1〉本実験プログラムは、12人で行うサバイバルゲームです。


〈館の掟 その2〉残り6名になった時点で本実験プログラムを終了とする。


「なるほど、そういうことか…。」

僕は思わず声が出てしまった。


「どうやら気づいたみたいだね。そう、このゲームは12人で行われている。今、この部屋にいる人数は私を含めて6人。」


「つまり、他にも人がいるってことなの?」

女性が言った。


「そう考えるのが自然でしょう。続いて〈その8〉を項目を見てください。」


確か〈その8〉は紹介されて無かったものだ。


〈館の掟 その8〉〈その1〉にて本実験プログラムは12人によって行うゲームと記載しておりますが、あらかじめ初めに6名ずつの2チームに分けております。

チームメンバーの区別は、館手帳デバイスの色でご判断ください。

(オープニングムービー際にいらっしゃいました部屋にいる6名がチームメイトになります。)


「つまり、僕たちは仲間ってことなのか…」

また声が出た。


「そうです。あまりの衝撃でお忘れになったいたかもしれませんが、モニターに写っていた支配人も初めに言っていました。」


確かに言っていた気もする。


「だから、私達は協力していくべきなのですよ!」


「でも、人を殺すのには変わらないのでは…?」


「きっと、相手チームも脱出することを考えています。同じ目的同士、話し合えば殺し合わなくて済むはずです。」


「それって本当…?本当に人を殺さないでここから出られるの…?」

突然、小さな女の子が言った。


「もちろん、大丈夫ですよ。だから安心して下さいね。」

男性は優しく女の子に言った。


「そっか…。良かった!」

女の子はニコッと笑った。


この笑顔のお陰か、部屋の空気が変わった。


「よーし!それじゃあ、仲間同士自己紹介でもしようぜ!」

突然同い年くらいの男の子が声をあげた。


「そういえば、まだ自己紹介をしていませんでしたね。」


部屋は笑いで包まれた。


もしかしたら、本当に僕らは助かるかもしれない。

少しだけだけれども、この絶望的状態から脱出できたかもしれない。

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